大阪のタクシー運転手(自称60代後半)がこんなことを言っていました。

 「今年は広島と日本ハムなんやけど、結構、大阪も盛り上がってますわな。やっぱり大谷とか黒田とかの存在が大きいんですかな」

 まさにその通りです。広島と日本ハムの日本シリーズ真っ最中。私も広島担当で現場に出ています。

 通常は阪神がメーンの取材対象なのですが、このコラムでも何度も書いたように広島に対しては阪神とはまた別の思い入れがあって、そこをくんだ日刊スポーツの「おとこ気起用」か、いや単なる人手不足、という声も聞こえてきますが、それはともかく、この年になって最前線で取材、執筆できるのはありがたいことではあります。

 さて、いまさらですが私はプロ野球が大好きです。

 その理由の1つに、誤解を恐れず言えば、「東京がデカい顔をしていない」ということがあります。

 政治はもちろん、経済も文化も中心は首都・東京です。五輪だって、大阪も名古屋も名乗りを上げたのに話にもならず、50年以上たっても、結局、日本でやれることになったと思えば、また東京でした。

 都市の持つパワーを考えれば仕方のないことなのですが、大阪生まれ、学校も大阪、会社も大阪の人間としては、おもしろくない。「以前は大阪もいいセン行ってたらしいのになあ」なんて、もはや愚痴以外の何ものでもないですね。

 その点、プロ野球は少し違います。確かに日本野球機構(NPB)の拠点は東京ですが、プロ球団は全国にある。そして、いま、地方の球団が注目されています。

 かつてのように「プロ野球=巨人」と思っている人は、もはやいないでしょう。12球団で、例えば女性ファンが特に多いのは、広島と日本ハムらしい。その2球団が日本シリーズで激闘を繰り広げるとは、なんとも象徴的な出来事です。

 マツダスタジアム、札幌ドームは観客であふれました。シーズン中の甲子園球場もヤフオクドームもいつも熱い。地方は負けていないぞ。

 と言いつつ、巨人、ヤクルト戦などで東京に泊まると、不要な買い物をしたり、夜の街をウロウロしたりするのが大好きなのは否定しません。

 新しいものを手に入れ、「これ、東京で買(こ)うてきたんやぞ~。ええやろ~」と、いまだに言ってしまう私がいるのです。

 いずれにしても「対東京」は地方の永遠のテーマ。2球団には地方代表、そしてプロ代表として最後まで徹底的にいいプレーを見せてほしいものです。と言っても、もう少しですが…。