WBC侍ジャパンの合宿も26日で終了。いよいよ本番モードに突入していきます。阪神からは唯一、藤浪が参加中です。その藤浪が笑顔でキャンプ地の宜野座を出発した22日の様子をいいもんだなあ、と思って眺めていました。

 WBCについてはいろいろな見方、言われ方がされています。代表戦といってもサッカーW杯の注目度とは比べるまでもないし、野球自体、世界的な人気スポーツとは言い難い。さらに今回、日本人大リーガーの参加も青木だけ。注目された日本ハム大谷まで故障で辞退しました。

 そんな状態だからこそ、WBC初参戦で素直にやる気を見せている藤浪に好感を持っています。大谷が出られないのなら中継ぎではなく先発で投げればいいのに…と思うのは、ちょっと阪神寄りでしょうか。

 そんな藤浪を見ていて、余計なお世話ながら少し話をしたくなりました。かつてWBCでの活躍で日本中を熱狂の渦にたたき込んだイチロー(マーリンズ)のことです。

 今年の2月、恒例の神戸自主トレを行っているイチローの元を訪れました。あいさつ、雑談をしただけですが、個人的にはもう1度、WBCで戦う姿を見たいと思っていたので、そんなことを言いました。

 イチローは少しだけ、話をしてくれました。詳しくは書けませんが、世界大会で期待を背負って戦うのがいかに大変か、という内容でした。

 くしくも現在、キャンプ中のイチローは負傷していますが、それをのぞけば大リーグを通じて故障者リスト入りしたのは09年に胃潰瘍になったときだけ。その原因はWBCでのストレスとされています。

 「そんなことはみんな忘れているかもしれませんけどね…」。そう笑ったイチローの様子を含めて、宜野座キャンプ中、少しだけ藤浪に伝えたわけです。

 「ふ~ん。そうなんですね…」。真剣な表情で藤浪は聞いていました。WBCで好結果を出すのはもちろんですが、元気に戻ってきてほしいと願います。

 と言いつつ、欲を言えばストレスに打ち勝って自分を抑え、投げる経験を積んでほしい。プレッシャーの中で制球を乱さずに力を出す。高校球児の夢、春夏連覇を経験した彼だからこそ新たな舞台をシーズンに生かしてほしい。それが阪神だけでなく日本のエースへのステップとなるはずです。中日-阪神のオープン戦が雨天中止になった北谷球場でそんなことを思っていました。