【173】<ファームリポート:中日ファームシートバッティング>◇24日◇ナゴヤ球場室内練習場


開幕2軍が決まった中日・根尾昂投手(23=大阪桐蔭)が室内練習場で行われたシートバッティングに登板し、打者25人に四球2、8安打、2失点という内容だった。

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21日に立浪監督が根尾の開幕2軍を明言していた。根尾はオープン戦で3試合に登板して防御率3・86。春季キャンプから先発投手として調整してきた初めてのシーズンは悔しいスタートとなった。

23日、ナゴヤ球場で根尾に話を聞いていた。この日はあいにくの雨で広島との試合は中止。天気予報から中止の場合は室内練習場でシートバッティングに登板することになっていた根尾は、いつものように気合十分でのマウンドだった。

初回から最速145キロの真っすぐは非常に良く走っていた。私は打者の手元で伸びる真っすぐかどうかをチェックポイントにしているが、この日の根尾の真っすぐはそういう観点からも、球威は十分だった。試合後に受けていた石橋も「スピードガン以上の伸びがありました」と、真っすぐのキレが上々だったと言っていた。

初回は3三振、2回、3回と毎回三振を奪う上々の立ち上がりだったが、4回以降は乱れた。4、5回で6安打を打たれた。試合後、短く話したが根尾は「諸事情です」とだけ短く答えただけだった。

恐らくマメ、爪など指先にアクシデントが起きた可能性と感じた。ただし、1球ごとに声を張り上げ、三振を奪った場面では「ヨッシャー」と叫び、気合は十分だった。2軍降格で、気持ち的にはもやもやしたものはあるはずだが、こうしたところで気持ちの強さが前面に出るのが根尾のいいところだろう。

室内練習場のため、シートバッティングで、内野の後ろにはネットが張られてある。ヒット性はもとより、打ち取った打球がネットにあたって転がると、それを根尾は走って拾いに行っていた。

気持ちを高めて、体を動かし、打ち取ったボールを拾ってと、躍動感を出しながら気持ちを入れたピッチング。見ていて、私は根尾らしいなあ、と感じずにはいられなかった。

言うまでもなく、根尾のプロ入り後のここまでは苦難の連続だった。それはひとえに本人の実力不足と、根尾自身はきっと言うだろう。確かにショートから外野、さらに投手と転向が続いたのは、首脳陣の判断であり、野手で結果を出せなかった根尾の力量によるところが大きい。

もともと先発陣の層が厚い中日投手陣の中で、6枠目を争う厳しい競争が予想されていた。その中で、オープン戦で圧倒的な数字を収められずに開幕2軍は、今のチーム内での序列を物語る。ここで腐る根尾ではない。

しっかり5回、105球を投げきり、これでまた恐らく中6日を軸に、次回の登板に向けて準備を進めていくはずだ。そして、立浪監督が言うように、必ずチャンスは来る。今はそのチャンスがあると信じて、しっかり投げて今の調子をキープするだけだ。

プロ6年目の開幕は2軍スタート。そして1軍昇格した時、これまでの練習が実を結ぶピッチングが現実のものとなるよう、これからも根尾の戦いを見守っていきたい。(日刊スポーツ評論家)