岩手のぶ厚い壁を破る-。10日開幕の岩手大会で、宮古商が初優勝を狙う。94年の盛岡四を最後に20年間、甲子園代表校は私立校が続く。昨秋県3位で東北大会に出場した公立校の宮古商は、春の県大会で今夏の優勝候補・花巻東に1-2と惜敗。打倒私立への意識が高まり、全員野球で夢をかなえる。初戦2回戦は11日、釜石と対戦する。

 甲子園に例年以上に本気だ。開幕を目前に迎え、宮古商の士気が高まってきた。打倒私立へ柳沢優大主将(3年)の言葉にも力がこもる。「勝ちたいという気持ちが強いチームが勝つんじゃないですか」。

 昨秋の東北大会に出場して変わった。それまで県内校の勝敗だけを気にしていた選手は「東北のチームはどうなった? という会話になった」と柳沢主将は言う。その東北大会は1回戦で松島(宮城)に敗れたが、山崎明仁監督(35)は「上のレベルの大会に出て、1段階も2段階も意識が上がった」。甲子園の目標が明確になった。

 飛び抜けた選手はいない。全員野球がモットーだ。現チームは昨秋の県大会準決勝で6回コールド0-10と敗れた花巻東に、今春の県大会1回戦は1-2。相手打線の不調があったとはいえ、エース右腕で4番の森谷秀吾(3年)を、右人さし指の突き指で欠きながら善戦した。

 山崎監督は宮古商OB。私立の優勝が続き始めた高校3年の97年夏に、準々決勝で優勝した専大北上に1-2と惜敗した。打倒私立への思いは選手と同じように強い。「そこに風穴をあけたい」と言った。昨年4月の監督就任後、打撃練習で走者を置き、より実戦に近いトレーニングを続けてきた。東日本大震災の影響でグラウンドは液状化現象が続き、雨が降ると遊撃付近に大きな水たまりができる。右翼のネットまで約65メートルと狭く、毎週土、日曜は県内中心に遠征して実力を磨いてきた。

 私立を倒すポイントとして、山崎監督は「ロースコアに持ち込めるか」と明かし、1点を左右するバント、エンドランなどの緻密さも鍵とした。選手は地元出身で、森谷は「歴史を変えたい」と目を輝かした。バックネットには「理想に燃えて甲子園」の大きな看板が掲げられる。8日後の11日、進撃が始まる。【久野朗】

 ◆岩手県立宮古商業高校 1919年(大8)、町立宮古実業補習学校として創立。何度か校名を改称し、63年に宮古高から商業科家政科が分離独立して宮古商を設立。同時に現在地の宮古市磯鶏3の5の1に移転。全校生徒460人(女子265人)。野球部の部員はマネジャー5人を含め41人。ヨット部は全国高校総体の常連。佐々木巧校長。