「三十二の瞳」で40年ぶり旋風へ!! 中村(高知)が部員16人のハンディをはねのけ、21世紀枠でのセンバツ出場を決めた。専用グラウンドはなく、使えるのも週2日だけ。文部両道の校風で時間も限られるなか、工夫した練習で、昨年は秋季四国地区高知予選の決勝で明徳義塾に完封勝利した。

 練習試合を行うのも一苦労だ。バスで高知市内に出るのも愛媛・南予に向かうのも2時間以上を要する。往復5時間の長旅だ。同校出身の横山真哉監督(54)は「挙げたらキリがない。人数も少ないし、時間も限られている。それでも、ハンディと思っていない。練習では常に試合に関係する動きをしている」と胸を張る。バスの中では試合映像を見て反省会。紅白戦もできず、故障者が出れば公式戦出場の危機に陥る環境だが、雨でも泥んこで白球を追いかけた。家に帰れば、選手は自主練習を重ねた。

 学校の近くを、清流の四万十川が流れる。高知西部に位置し、少子化が進むなかで奮闘する。40年前は12人だった。77年のセンバツはエース山沖之彦(元阪急など)を擁して初出場で準優勝。「二十四の瞳」と呼ばれて脚光を浴びた。中学3年生だった同監督は当時を思い起こし、ナインに話し掛けたことがある。

 「県立は何らかのハンディを克服して力にしてやっている。40年前も、たくさんハンディがあった。うちより人数が少なかったぞ」

 当時の映像を見せるプランもあるという。27日、1年生6人は東京で研修旅行のため不在。仲間10人で甲子園行きを喜んだ。山本泰生主将は「人数は少ないけど、その分、多く練習できる。先輩の名に恥じないよう、中村高校の野球をやって、1戦1戦、勝ち抜いていきたい」と前を向く。ナインの合言葉は「一人一役全員主役」だ。投手を中心とした守りの野球で、全国に挑む。【酒井俊作】