第100回全国高校野球選手権大会の決勝で、金足農(秋田)が大阪桐蔭(北大阪)に2-13で完敗し、初優勝はならなかった。悲願の白河越えを狙った第100回の夏、吉田は計11試合で1517球を投げ、完全燃焼で甲子園を去った。

 11年に秋田県教委や県高野連が立ち上げた「高校野球強化プロジェクト」も、秋田県勢103年ぶり決勝進出の一助となった。10年夏に能代商(現能代松陽)が敗れ、県勢13年連続初戦敗退の屈辱がきっかけだった。中京大中京(愛知)で優勝経験のある大藤敏行氏や、スポーツ医科学の専門家などを招き、小学生から高校生、指導者まで幅広く教えを受けた。また、県外の強豪校を招待し、上位校と招待試合も重ねた。

 金足農には元日本新薬監督の前田正治氏や、元熊谷組監督の清水隆一氏らが訪れて指導した。甲子園入り後も清水氏が練習会場を訪問。横浜との3回戦で逆転3ランを放った右打者の高橋は「いかにボールに強い力を伝えられるかなど、確実にレベルアップできた」。ステップする左足とトップ位置からの振りだしのタイミングなどを修正した。清水氏は「レベルの高い子は多い。ただ実戦に生かす方法が浸透していなかっただけ。全国トップレベルと十分対抗できる資質はある」と太鼓判を押していた。

 エース吉田も昨秋に球速や回転数、回転軸などを計測。動作解析をフィードバックしてもらい、冬の取り組みに生かした。関係者は「ボールの回転の軌道もまっすぐで、回転数もプロ並みと聞いている」と証言。中泉一豊監督も「我々が考えもつかないことを指摘していただけるので、とてもありがたい」。宿舎での過ごし方、水分補給の仕方に至るまで、指導は細部にわたる。

 秋田は「好投手が育つ土壌」ともいわれてきた。バスケットボール、バドミントンを筆頭に、スポーツ大国とも呼ばれた。県教育庁保健体育課の野中仁史氏は「小中学生の体格、体力は全国トップクラス。体の大きい子が多いのは確か。中学校まで軟式をやる子が多く、肩を酷使していないことも要因かもしれない」と分析。スポーツ庁が実施する「全国体力・運動能力調査」でも東北で群を抜き、数値は例年高い。

 金足農の躍進は、素材の良い子どもたちに、全国の強化経験を注入し結実した好例だ。【鎌田直秀】