<全国高校野球選手権:成田2-1智弁和歌山>◇7日◇1回戦

 「唐川2世」が甲子園デビュー戦で、甲子園常連校を力でねじ伏せた。千葉代表の成田・中川諒投手(3年)が、春夏通算3度の優勝を誇る智弁和歌山(和歌山)戦に先発。OBのロッテ唐川侑己投手(21)を参考にしたゆったりとしたフォームから、最速142キロの直球とスライダーを武器に14個の三振を奪った。味方の失策絡みで1点を失ったが、6安打に抑えて完投勝ちした。

 ピンチのたびに直球が勢いを増した。2-1の7回2死一、三塁。一打同点の場面にも中川は冷静だった。「1点あれば大丈夫。ピンチだと、ワクワクする」。カウント2-1からの4球目。中盤は130キロ台中盤と抑え気味にしていた直球は141キロを計測。2番岩佐戸を空振り三振に仕留め、雄たけびを上げた。

 強豪にひるまなかった。1回、3つのアウトを三振で奪い「いけるんじゃないかと思った」。3者連続三振の3回を含めて14奪三振。そのうち11個が空振りだった。フォームを参考にするロッテ唐川は甲子園デビュー戦の06年センバツの小松島(徳島)戦で10三振を奪い、完封した。「超えたい。11個取って完封したい」と予告したが「(唐川に)負けました」と笑った。

 昨夏の千葉大会5回戦、千葉黎明戦では9回に7失点して負けた。そんな弱い自分と決別した。今夏の千葉大会前、梁川啓介部長(35)に呼ばれた。唐川を引き合いに「自分がチームの勝敗を背負うくらいでやれ」と諭された。大阪入り後は「勝てる」「そうは打たれない」と強気に言い切った。覚悟を決めた中川なりの意思表示だと、梁川部長は受け止めた。

 6回、先頭打者に3球目を投げた後、投球動作が止まっているように見えると球審から注意を受けた。その打者を失策で塁に出し、1点差に詰め寄られた。焦ってもおかしくなかったが「守りが焦っていた。自分が切り抜けないと、と思った」。落ち着いて、強気に投げて後続を断った。尾島治信監督(41)は「比べはしないけど(唐川に)近づいてきたと思う」と褒めた。

 中川は「いいところですね。千葉とは全然違う」と、あどけない顔をほころばせた。夏20年ぶりの勝利をもたらし、大会7日目の八戸工大一戦で58年ぶりの2回戦突破に挑む。【今井恵太】