<全国高校野球選手権:光星学院2-1東洋大姫路>◇17日◇準々決勝

 光星学院(青森)が東洋大姫路(兵庫)に競り勝ち、11年ぶりのベスト4に駒を進めた。今大会初先発のエース秋田教良(3年)が粘り強く投げて8安打1失点で完投。大会屈指の右腕、原樹理(3年)に投げ勝って、東日本大震災に襲われた東北勢最後のとりでを守った。

 最後の打者は原だった。9回裏2死、息詰まる投手戦を演じた相手エースを遊飛に仕留めると、秋田は小さく右の拳を握った。「原君は大会前から有名だった投手。勝ててうれしい」。2、3回戦で計27安打の重量打線が、5安打と沈黙した。「すごく苦しかった」今大会初先発だったが、最速145キロの直球と120キロ台のスライダーを低めに集め、逃げ切った。

 ピンチを迎えては切り抜けた。1回無死一、二塁、投前バントを素早く処理して併殺。2回1死二、三塁では原のスクイズを察知し、外角に外して捕飛に仕留めて再び併殺。8回無死一塁からのバントも、抜群のフィールディングで二塁封殺。室内練習場がなく、氷点下10度を下回る冬場も屋外で練習を重ねた成果だ。

 175センチ、83キロの肉体は「破壊と再生」で手に入れた。4220グラムで生まれ、15歳で体重は80キロ超。中学時代に関西大会優勝投手になり、鳴り物入りで入学した。だが「練習についていくだけで」60キロ台後半まで激減。その後、丼飯3杯がノルマの食事と筋トレに励み、昨夏から筋肉で12キロ増えて球質が重くなった。この日は17個のゴロアウトを奪った。

 震災直後、ともに今春センバツに出場した東北(宮城)のエース上村は、中学時代からの親友でありライバル。その東北は宮城大会で敗れた。今大会では交流のある花巻東(岩手)などが既に去って、東北唯一の勝ち残り。「東北の最後の代表という意識で、勝ち続けたい」と燃えていた。

 地元八戸で、冬場に走り込んだ海岸が津波で壊滅した。「少しでも元気を与えたい」と、母和美さん(48)に「光星最高のベスト4まで絶対に行く」とメールを送り、約束を果たした。大阪から青森に渡って2年半。大雪に耐える東北人のような我慢強い投球で、チームを11年ぶり2度目の4強に導いた。【木下淳】

 ◆秋田教良(あきた・のりよし)1993年(平5)6月30日、大阪府生まれ。磯長小4年の時に太子ジュニアで野球を始める。太子中時代は河南シニアに所属。4番エースとして、3年時に春夏の全国大会で16強。光星学院では1年秋からベンチ入り。2年秋からエース。今春センバツ1回戦の水城(茨城)戦で5安打完封勝ちした。右投げ右打ち。最速148キロ。家族は両親、姉、兄。