<センバツ高校野球:開星4-1慶応>◇24日◇1回戦

 甲子園史上初の「早慶戦」が夢と消えた。昨秋の明治神宮大会で日本一に輝いた慶応(神奈川)が1-4で開星(島根)に敗れた。プロ注目の白村(はくむら)明弘投手(3年)は11三振を奪ったが5安打4失点(自責3)、2年連続で初戦敗退した。PL学園(大阪)は中野隆之投手(3年)の完封で1-0と西条(愛媛)を破った。18年ぶり出場の箕島(和歌山)も初戦突破。第3試合途中にはバックスクリーンにWBC日本代表の優勝速報が流れ、甲子園も祝福ムードで盛り上がった。

 スタンドに向かうエースの目から涙がこぼれ落ちた。1点を先取した直後の6回、白村が突如崩れた。連続四球で無死一、二塁のピンチを招くと、2死後、2球続けた変化球の後、本田に137キロ直球を狙い打たれた。左翼線を深く破られ、逆転を許す。「精神的な部分がまだまだ甘い。自分のせいで負けた」と悔やんだ。味方失策から招いた8回無死二、三塁では、前進守備を取った左翼手の頭上を抜かれた。4失点で2年連続の初戦敗退。決勝まで勝ち上がれば可能性があった甲子園史上初の「早慶戦」の夢は消えた。

 ドラフト制以降初となる慶応からの直接プロ入りを視野に入れる。最速143キロの直球にブレーキの効いたカーブで11奪三振。力の片りんは見せた。大会直前、応援に来られない美濃加茂高(岐阜)野球部監督の父信幸さんから手紙をもらった。普段はほめられることはないが「ここまで来たお前の姿に感激」と書かれていた。「ウルッてきた」と力に変えたが、結果につながらなかった。

 観衆は1万人で、伝統校には珍しくアルプス席に空席が目立った。WBC決勝と試合開始時刻が重なった。植田主将が「お客さん減るかな」と予想した通りだった。昨秋の王者が、早過ぎる春を寂しく終えた。【前田祐輔】