<高校野球北北海道大会>◇28日◇代表決定戦◇釧路地区予選

 北北海道屈指の右腕が期待通りの快投を見せた。釧根地区開幕戦でプロも注目する武修館・上田昌人(3年)が、釧路明輝を相手に1安打投球を披露。毎回の15三振を奪い、二塁を踏ませず4-0で完封発進した。春の地区1回戦で釧路工にコールド負けした屈辱をバネに、最後の夏は初戦からエンジン全開だ。

 182センチから投げ下ろす上田の右腕がムチのようにしなり、ボールはうなりを上げた。初回、味方の1、2番がわずか7球で先取点を奪った。「守り切る。その後に無得点が続いたけど、抑えるのがエースの仕事なので」。球種は140キロ台の直球とスライダーのみ。それでも的は絞らせない。圧巻は7回だ。握力は低下していたが、相手2番からの好打順もすべて直球で空振り三振を奪った。9回最後の打者も三振に仕留め、試合前、チームメートに予告した自己最多15奪三振をマークした。

 ベンチで見守った島影隆啓監督(28)は開口一番「上田の頑張りに尽きる」と手放しでたたえた。春の大会前に右ひじに軽い違和感を覚え、直前に急性胃腸炎を発症。右足首のアキレスけん痛と、立て続けにアクシデントが上田を襲った。地区1回戦では釧路工に2-1とリードした5回に登場したが、相手打線につかまり2イニングで8失点。コールド負けの屈辱を味わった。「言い訳にしませんが、効き過ぎる薬」と島影監督は振り返る。上田は「これまでの考え方が甘かった」と覚悟を決めた。

 1球の怖さを感じたからこそ投球を変えた。フォーク、カットボールなどの変化球を捨て、直球とスライダーで組み立てた。ボールが高めに抜けるクセも矯正した。女房役の菊池京亮捕手(2年)は言う。「僕がベース上にかがみ込み、ワンバウンド気味に低めへ集める練習を繰り返しました」。毎週火、水、木曜日の3日間は300球、低めの投球練習を続けた。

 この日は105球のうち91球が直球。3月中旬の茨城遠征で最速145キロを記録したが「今日は暖かかったし、それ以上スピードは出ていると思う」と自信を取り戻した。昨夏は北大会4強、秋は全道8強でセンバツ21世紀枠候補に選ばれたが吉報は届かなかった。目標は甲子園、そしてプロ入り。「そのためにも1勝ずつ、1イニング、1球ずつ大切にいきたい」。完全復調した上田は、その言葉に力を込めた。【上野耕太郎】

 ◆上田昌人(うえだ・まさと)1992年(平4)11月2日、厚岸町生まれ。厚岸小3年の時、地元少年チーム「厚岸オーシャン」で野球を始めた。厚岸中から武修館に入学後は、1年春の地区予選から背番号14でベンチ入り。昨夏の北大会では2年生エースとして、前身の釧路短大付時代の78年以来31年ぶりとなる4強進出の原動力に。家族は両親と兄妹。182センチ、89キロ。右投げ右打ち。