ヤンキースはチームの顔だったデレク・ジーター氏が引退し「ポスト・ジーター時代」の幕開けとなっているが、今のところチームで一番目立っているのが薬物使用のため1年間の出場停止処分から復帰したアレックス・ロドリゲス内野手だ。

 今季のロドリゲスは、全盛期とは人となりがずいぶん変わった。薬物問題が発覚する前の活躍していた時代は自分本位な言動が目立ったが、今は謙虚になり、初心に帰って野球を楽しんでいるように見える。球団からはシーズン前から「レギュラーの座は確約しない」「他の選手と同じように扱う」などと言い渡され、シーズンが始まるとその通り、指名打者や一塁、三塁のポジションをたらい回しにされ、打順も7番を打たされたかと思えば2番に入れられることもある。かつてのA・ロッドならあからさまに不満を口にしただろうが、今は文句ひとつ言わず「いろいろなポジションをこなさないといけないので、本当に野球にだけ集中している。そういう役割も楽しんでいるよ」と笑顔で話していた。

 しかしチーム内では、やはりぎこちない空気がA・ロッドを取り巻いている。2年ぶりに合流したチームは顔触れも大きく変わり、仲の良かったロビンソン・カノもいなければ、年齢の近かったデレク・ジーターもいない。クラブハウスで親しげに会話をするチームメートは誰もおらず、A・ロッド自身、報道陣のいる時間帯にクラブハウスにいることはほとんどない。打撃が周囲の予想以上に好調で、試合後は報道陣に囲まれることが多いが、クラブハウスに現れるのは他の選手がほとんど帰宅した後、一番最後にようやく出てくる。他の誰かと接触するところを見かけないため、孤独感が漂う。そんな空気の中では、野球に集中するしかないのかもしれない。