広島の新外国人クリス・ジョンソン投手(30=ツインズ3A)が26日、ついにベールを脱いだ。降雨コールドとなった韓国・KIA戦(コザしんきんスタジアム)に先発。2回を1安打無失点に抑え、2三振を奪った。速いテンポからツーシーム、カットボールをコーナーに投げ分ける技巧派に、他球団スコアラーも戦々恐々。待望の先発左腕は順調だ。

 左投手にしては珍しく、ジョンソンはプレートの三塁側に足をかけた。ノーワインドアップから、コーナーに投げ分ける。直球は球速140キロをわずかに超えるほどだったが、ツーシームにカットボール、カーブでカウントを整える場面もあった。2回を投げ1安打無失点。初の対外試合で好発進だ。

 「結果としてはよかった。体調もよかったし、ストライク先行でいけたからね。毎日、正しい方向に進んでいるよ」

 ベールに包まれていた。ブルペン投球は1クールに1回程度。紅白戦にも登板せずシート打撃に投げただけだった。「ブルペンで投げ込むタイプじゃないからね」。これにはセ・リーグ球団のスコアラーも「謎だ。本当につかめない。情報が少なすぎる」と頭を抱えていた。

 “情報屋”を泣かせてきた男は、投げてもまた、泣かせた。ヤクルト衣川篤史スコアラーが「両サイドの制球がいい。ローテに入ってくる」と言えば、巨人樽見金典スコアラーも「右へのカットはやっかい」。中日善村一仁スコアラーも「クレバーな印象。もっと上げてくる」とそろって警戒心を強めた。

 外国人特有のイラつきや、セットの不停止、パワー頼みの傾向も見られない。本人も自分のタイプを理解し、打ち取る工夫を凝らしている。「10個の三振はとれないけど、10個のゴロアウトを取れる。少ない球数で、試合の奥まで投げるのが仕事だよ」。さらには「短いイニングだったので」とチェンジアップを封印。スコアラー陣が頭を悩ませる日は続きそうだ。

 取材の待ち時間には、カメラに親指を立てる「サムズアップ」で応えた。さらに「モウイッカイ、アブナイ、カエリマス」と、覚えたての日本語も披露。クレバーで落ち着いた左腕は、静かに着々と照準を合わせている。【池本泰尚】

 ◆クリス・ジョンソン 1984年10月14日、米国生まれ。06年にチーム1巡目でレッドソックスに指名され、13年にパイレーツでメジャーデビュー。昨季は、ツインズで3試合に登板し0勝1敗、防御率4・73。メジャー通算7試合0勝3敗、防御率5・32。マイナー通算213試合で56勝64敗、防御率4・27。父方の祖母が日本人。「僕の中に日本人の血が入っていて、いつか日本でプレーがしたかった」。193センチ、93キロ。左投げ左打ち。