日刊スポーツ評論家によるペナントレース順位予想、セ・リーグ編です。ヤンキースから広島に帰ってきた男気(おとこぎ)エース黒田は、果たして悲願の優勝に導いてくれるのか? はたまた、4連覇を狙う巨人はどうなるのか? 虎党は秋に美酒が飲めるかな? 梨田昌孝氏(61)と宮本慎也氏(44)は、混戦で一致しました。

◆宮本慎也 混戦で生きる巨人の試合巧者

(1)巨人(2)阪神(3)広島(4)ヤクルト(5)中日(6)DeNA

 上位チームと下位チームに分けるのは、それほど悩まなかったが、その中での順位付けは本当に難しかった。上位同士と下位同士のチーム力は拮抗(きっこう)しており、AクラスとBクラスの中での戦いは、混戦といっていい。

 当初の予想は、1位阪神、2位広島、3位巨人だった。チームの戦力だけを比べるのなら、この並びになると思った。しかし、3チームとも抜きんでた力がない。そうなれば混戦になり、優勝経験が豊富で、ここ一番の一戦に強い巨人が、出し抜くような展開が思い浮かんだ。大型補強もなく、主力選手の衰えが懸念され、昨年以上に苦しむとは思うが、試合巧者という武器は、混戦の中でこそ強みを発揮するのではないか。

 阪神は鳥谷が残留。投手陣も若手が成長し、ルーキーも地味ながら戦力として計算できるぐらいの厚みが出てきた。それでも投打において主力として挙げられる名前は、外国人選手ばかり。昨年同様、チームはまとまりにくいし、一丸となって優勝を目指すイメージが湧かなかった。

 広島は、バリバリメジャーリーガーの黒田が加入。キャンプ中、緒方監督に話を聞いたのだが「黒田に頼っているようじゃダメ。若手が伸びてこないようでは優勝できない」と話していた。新監督でありながら浮ついた様子もなく、肝が据わっている印象を受けた。先発陣や野手のレギュラーを見ると、主力の戦力は充実している。しかし長い間、優勝争いをしていない経験不足や、長いペナントを戦う上での選手層の薄さが気になり評価を下げた。

 上位3チームにとって怖いのが、打線が強力なヤクルトとDeNA。ただし、Bクラスに挙げたチーム同士は混戦で、4位から6位まで順位が入れ替わってもおかしくない。

◆梨田昌孝 3番西岡が阪神最大のカギ

(1)阪神(2)広島(3)巨人(4)ヤクルト(5)DeNA(6)中日

 どこも抜け出しそうなチームは見当たらない。これという決め手に欠くことで、セ・リーグ優勝のチャンスは5位のDeNAまで広がるとみていいだろう。

 注目度が高いのは、なんといっても黒田の加入で雰囲気の良い広島。現役時代に攻走守に3拍子そろったプレーヤーだった緒方新監督は、果敢に足を使った、粘っこく、スピーディーな野球を繰り出すはずだ。

 日本球界復帰の黒田は、力で押す投球から、ボールを動かしながら丁寧にコーナーを突くタイプに変身した。しかも、実に変化球の制球力が良く、前田をはじめ、大瀬良、野村ら若手にも好影響を及ぼす。

 若手の菊池、丸ら機動力野球に応えうる選手もそろって投打のかみ合わせがいい。ただ、エルドレッドが離脱、新井も故障がちで長打力不足は不安材料。どこまで得点力が上がってくるかにかかってくる。

 阪神を最上位に予想したのはマイナス材料が少ないため。メッセンジャー、能見、藤浪、岩田ら先発のコマはそろっている。攻撃も鳥谷を1番に起用し、ゴメス、マートンの両助っ人が昨年並みに働けば安定感はリーグトップ。気掛かりは控え層との格差。西岡が起用される「3番」が機能するか否かが最大のキーだ。

 巨人はチーム力に未知数の部分が多い。新外国人投手は計算できず、ルーキー戸根、高木勇が有望株とはいえ不透明だ。万全に布陣が固定されないため、やりくり上手な原監督の手腕に頼らざるを得ない。

 面白いのはDeNAの存在だ。久保、山口、モスコーソ、井納らまでそろって先発不足の課題が解消されつつある。筒香、桑原の成長、新人倉本ら若手台頭に加え、Y・グリエルが合流すれば台風の目になる可能性を秘めている。

◆吉田義男 阪神継投で逃げ切れる強み

(1)阪神(2)巨人(3)広島(4)ヤクルト(5)DeNA(6)中日

 節目の年のタイガースは強い。セ・リーグでストッパーが確立されているのは阪神だけ。呉昇桓の仕上がりが順調にきたのは心強い。巨人は沢村が先発から抑え転向、広島ヒースにしても未知数で、阪神の場合は継投で逃げ切れる態勢ができている。

 そこにつないでいく安藤、出遅れ気味の福原といったベテランのリリーフ陣にやや不安は残されたが、新人石崎、松田ら若手にチャンス到来とプラスに考えたいものだ。岩本、岩崎、岩貞、ルーキー横山らもさらに競争させてほしい。

 打線は鳥谷が攻守に安定しているのが心強い。トップに座るようだが、個人的には鳥谷、ゴメス、マートンのクリーンアップが得策という考え。西岡は過去の実績とプライドを高く評価し過ぎているようだ。

 打順は「3番」でなく「1番」で奮起させてもいいと思うし、もっと競い合わせる必要がある。福留の内容が良いのは頼もしい。投打に力を出し切らせるという現場の挑戦する姿勢で開幕ダッシュを狙ってほしい。

◆山田久志 不安材料最も少ない阪神

(1)阪神(2)広島(3)巨人(4)中日(5)DeNA(6)ヤクルト

 一番バランスがいいのが阪神だ。不安材料が少ない、と言い替えてもいい。巨人にしろ広島にしろ、抑えがどうかなど不安定で心配な面がある。

 今季のセ・リーグは全体的に若い捕手の勝負になる。その意味で阪神は2年目の梅野が捕手として一本立ちできるかがカギを握る。阿部が一塁に回る巨人は小林。中日も谷繁に代わる松井雅がどこまで試合に出て投手を引っ張れるか。広島会沢、ヤクルト中村、DeNA黒羽根といずれも若い捕手がレギュラー格で起用される。その成長度がチームの勝敗を左右する。

◆権藤博 上本と西岡の守備に不安

(1)巨人(2)阪神(3)広島(4)ヤクルト(5)DeNA(6)中日

 オープン戦中盤までは阪神優勝の予想だった。でも終盤の上本と西岡の守備を見て、巨人1位に変えた。優勝するには守りが大切で、この2つの穴は大きな不安要素。浮沈は今後どう組み替えて固めていくかにかかっていると思う。捕手も若い梅野に最後までかぶらせるのは厳しい。抑えの捕手をつくる必要がある。恐らく藤井になるんだろうけど大事なポイントだ。

 巨人は層が厚い。なんだかんだ言って選手がそろっている。広島は今年がピークだろうが何か1つ足りない。中日は谷繁のスタメンが少ないと6位がある。

◆篠塚和典 巨人は戦力が揃うまでが鍵

(1)巨人(2)阪神(3)ヤクルト(4)広島(5)DeNA(6)中日

 ずばぬけたチームがなく混戦となりそうだが、巨人の地力は健在とみる。内海を欠く先発陣に不安はあるため戦力が整うまでいかに戦うかがカギ。阪神は投打のバランスがとれており守護神呉昇桓の存在も大きい。ヤクルトはバレンティン不在も打線はもともといい。投手は成瀬が加入し由規が復活すれば勢いがつく。広島は黒田が加わり投手陣はそろうが心配は打線。DeNAは中継ぎ、抑えに不安が残る。中日はベテランと若手がうまく融合できれば。3位以下は力が拮抗(きっこう)する。どこが出てきてもおかしくない。

◆小宮山悟 地力巨人と先発揃う広島2強

(1)巨人(2)広島(3)阪神(4)DeNA(5)中日(6)ヤクルト

 2強4弱だがパよりは詰まっている。巨人は今年ダメだろうという声も聞くが、潜在能力は一番高い。内海がいないのは不安材料だが。広島は先発がそろってバランスはとれてきたが、新井の故障がどう響くか。阪神は鳥谷が抜けなかったのが大きい半面、西岡の処遇が問題。三塁を本人は納得していない。気持ち良くプレーさせられればやる選手だが…。4位からはパと同じでダンゴ。その中でDeNAのバランスがとれてきた。中日は優勝度外視で若手に切り替えたらおもしろい。ヤクルトは投手が不安だ。

◆佐々木主浩 広島に勢い死角は守護神

(1)広島(2)巨人(3)阪神(4)ヤクルト(5)DeNA(6)中日

 上2つが抜けている。広島は黒田が戻ってきて先発がそろい戦力がアップした。勢いで上か。打線も悪くないが心配はリリーフ。巨人はケガ人が多い。特に投手陣。スタートでつまずくと年齢が高いのでやはり厳しい。3位争いで怖いのはヤクルトだ。打線はもともといい上に投手は成瀬が入り、由規ら故障者が戻ってくればおもしろい。DeNAは経験値が足りない。昨年、一昨年は本当のAクラス争いをしていない。ブランコがいれば3位に推すのだが…。他が補強をする中で、中日は補強ができていないので厳しいだろう。

◆緒方耕一 V争いは経験ない広島減点

(1)巨人(2)阪神(3)広島(4)DeNA(5)ヤクルト(6)中日

 昨年、主力選手のコンディションや状態が悪くても優勝している巨人が、V候補の筆頭になるのは揺るぎない。阪神は長丁場での決め手不足。広島は優勝争いの経験がないのがマイナスになる。首位に位置した時、負けられないというプレッシャーは半端ではない。勢いだけで勝てるほど、ペナントレースでの優勝は甘くないと思っている。DeNAとヤクルトは投手陣の駒不足が不安材料と言えよう。中日はベテランが多く、思うように若手が伸びていない。特に野手陣の攻撃力が劣っている。苦しい戦いになりそうだ。

◆里崎智也 巨人は新女房の小林次第

(1)広島(2)巨人(3)阪神(4)ヤクルト(5)中日(6)DeNA

 広島は黒田が加入して先発が安定した。若手の伸びもある。昨季、首位から陥落したのは投手陣に故障者が出たから。その部分が補われていれば、優勝候補の筆頭だ。エルドレッドのケガは痛いが、グスマンが穴を埋めるとみている。巨人は小林次第。阿部の守りのカバーはできても、打てないと8、9番で打線が切れ、得点源が減る。阪神は鳥谷の残留が大きい。レギュラークラスは遜色ない実力で戦力は整っているが、巨人に比べ層が薄い。主力の離脱がなく、中継ぎ陣が昨年並みならば、上位進出が見えるかもしれない。

◆真弓明信 投打総合力で阪神

(1)阪神(2)広島(3)巨人(4)DeNA(5)ヤクルト(6)中日

 A、Bクラスがはっきり分かれると思う。優勝候補は阪神。投打とも総合的に見て、力が安定している。ポイントは、投手では藤浪が1年間、ローテーションを守った上で貯金をどれだけつくれるか、打撃では昨季の打点王ゴメスが本塁打をどれだけ上積みできるか、だろう。広島の黒田復帰ムードは大きい。前田も締まるだろうし、チーム全体にもたらす効果は本物だ。巨人の落ち込みは激しい。

◆今岡誠 「厳しさ」ある巨人

(1)巨人(2)阪神(3)広島(4)ヤクルト(5)DeNA(6)中日

 戦力的には巨人、阪神、広島、ヤクルトの4チームは、どこが優勝してもおかしくありません。決め手は何だろうかと考えたときに、巨人には厳しさがある。若手だけでなく、主力に対しても厳しさは一貫している。ピリッとした空気感、緊張感があり、そこが強みでしょう。阪神は4番のゴメスが機能するかどうか。ゴメスが打てば、この打線は爆発力がありますし、3番に誰を置いても機能するでしょう。逆に不振が長引くようだとピンチです。広島や打線が強力なヤクルトを含めて、混戦になると思います。

◆一枝修平 巨人チーム活性化

(1)巨人(2)阪神(3)広島(4)ヤクルト(5)中日(6)DeNA

 6球団混戦だが、巨人が頭一つ抜けていると見る。オープン戦では低調だったが、個々の選手能力が高く、投手力がいい。阿部の配置転換、投手陣でも救援陣を再構築するなどチームが活性化している。阪神は打線がいかにつながるか。そのためには、やはり「3番鳥谷」。1、2番コンビは上本、大和。鳥谷はもっと強く振ることができれば長打も打てる。今のように当てようとする打撃ではなく、強く振ることを求めたい。広島も層が厚くなり注目の球団。抑えを確立できるかがカギだろう。いずれにせよ、セは混戦だろう。

◆桧山進次郎 万全福留心強い

(1)阪神(2)広島(3)巨人(4)ヤクルト(5)DeNA(6)中日

 チーム優勝に「ベテラン頼み」という場面が必ず出てきます。阪神は福留の仕上がりの良さが目立っている。1年前は開幕直後に故障したから悔いが残ったと思いますが、今年は万全です。計算のできる先発4人がそろって、その後は若手も控えている。呉昇桓も調子が良さそうです。

 広島もマイナス材料が少ない。黒田効果で前田が刺激され、大瀬良らにも影響を及ぼす。抑えのヒースまでいかにつなぐかがポイント。巨人も試合巧者ぶりであなどれません。

◆広瀬叔功 広島黒田だけでは

(1)阪神(2)広島(3)巨人(4)DeNA(5)ヤクルト(6)中日 

 広島は黒田がメジャーから戻ってきたことで優勝候補に挙げられているが、それほど簡単ではない。チームから抜けたバリントン、ミコライオ、それに故障のエルドレッドと不安要素は多い。全体的な安定感とで言えば現状、NO・1は阪神だろう。落ち込みが予想される巨人も急激に弱くなることはないと見る。昨年同様、この3球団での上位争いが展開されるはずだ。

◆大石大二郎 広島抑えポイント

(1)阪神(2)巨人(3)広島(4)ヤクルト(5)DeNA(6)中日

 阪神、巨人、広島まで優勝のチャンスがあるでしょう。なかでも注目度NO・1の広島はピッチャーがそろっています。黒田加入が大きいのは当然ですが、セットアッパー、抑えの人材がポイントでしょう。巨人は先発陣が不安視されるし打つほうも破壊力がダウンしている。クライマックスシリーズ圏内を狙うというならヤクルトは面白い。山田をはじめ川端、雄平、畠山ら打力もあって、ピッチャーでは成瀬が入って、昨年のようなことはなさそうです。