移籍後初勝利も、最初のアウトまでは遠かった。ヤクルト成瀬善久投手(29)は気が付くと3点を失っていた。「1アウト取るまで、地に足がついていなかった」。今年30歳になるベテランと言えども、気負いがあった。先頭打者に初球を打たれ、ちょっとしたパニックにもなった。さらに安打、3ラン…。4連打を許した後、マートンを左飛に打ち取ると、ようやく平静を取り戻すことができた。

 5回6安打3失点。一番打たれたくなかった西岡に3ランを打たれ、内容的には「先発として最低限しかできなかった。納得はいっていない」。だが、心強い味方打線が取り返してくれた。代打を送られ、降板した回の逆転劇には「こんな投球で申し訳ない気持ちがあったので、どうリアクションしていいか分からないくらいうれしかった」と感謝した。

 新天地での生活は、気付かないうちにストレスがたまるものだ。だが、成瀬には気遣ってくれる先輩がいた。契約用具メーカーや通うジムが同じだった石川が、手を差し伸べてくれた。キャンプ地の沖縄への移動も「一緒に行こう」と誘ってくれた。神宮のロッカーは2つ使っていたうちの1つを片付け、成瀬のために空けてくれた。「石川さんのおかげで、なじみやすかった」。

 初めてヤクルトのユニホームを着ての公式戦で「スワローズにいる感覚を味わえた。初めて、一員になれたかな」と感想を口にした。あとは、自分でも納得のいく投球でチームに貢献すること。「そうすればもっとチームメートと仲良くなれるんじゃないかと思う」。真のチームの一員となることを目指している。【竹内智信】