佑ちゃんがドタバタの1勝の「主役」になった。日本ハム斎藤佑樹投手(26)が、両チーム計34安打の大乱戦勝利を招いた。ロッテ戦に今季初先発。4回までに8点の大量援護を受け、今季初勝利へ順風満帆も暗転。4回に3失点し、勝利投手の権利目前の5回にピンチを招き4回1/3で降板した。5点リードも被安打8の内容に、栗山監督が非情な決断。6回に一時同点とされて大荒れの展開も、7回に勝ち越して最悪の事態は免れた。2カード連続で勝ち越しも、後味は悪かった。

 失意の戦場を、速足で後にした。斎藤が一番乗りで、帰路へと就いた。完璧過ぎる今季初勝利の追い風を受けながら、生かし切れなかった。自分への失望なのか。珍しく降板後には、荒れた様子を見せていたという。安全圏ともいえる大量援護がありながら、手に入れる可能性が高かった白星を逃した。勝っても、負けても、丁寧な報道陣対応は封印した。「すみません」と謝ったが「僕、今日はしゃべりたくないんで」と質問を遮った。敵地を出ると、暗闇へと姿を消した。

 無念が募った。好調打線がお膳立てし、4回までに8点リードした直後、その裏が致命傷になった。1死後、今江から3連打で2失点。2死二塁から肘井に適時二塁打を許した。続く9番田村にも四球。下位打線を相手に乱れ、無情な「KO」の呼び水になった。栗山監督の脳裏に、降板の選択肢が浮かぶ。5回1死一、三塁として覚悟を決めた。「あの(5)回でも遅いくらい。普通の投手だったら(降板は)前の回だったかもしれない」。5点の余裕があったが、2番手藤岡へスイッチした。

 ヒーローになるべき柱が去り、大きく荒れた。藤岡、3番手谷元で6回までに追いつかれた。首をかしげながら口を真一文字に結び三塁側ベンチへ下がった斎藤が、火を付けた打線。栗山監督が非情に局面を動かし一時、主導権を手放した。直後の7回に伏兵の岡、ベテラン田中と陽岱鋼の2本の適時打で再度、4点を勝ち越して逃げ切り。栗山監督は、ご立腹だった。開口一番、「申し訳ない。こういう試合をやる、こちらが悪い」と頭を下げた。開幕から2カード連続で勝ち越しても「そういう気分じゃない」と目を充血させ一刀両断し、憤った。

 最後に、また決断を下した。今日3日に斎藤の出場選手登録を抹消。同日オリックス戦(京セラドーム大阪)に先発する上沢を出場選手登録する。2軍でまずは再調整し、次回登板へ出直しを期す。3回までほぼ盤石の投球内容だっただけに、栗山監督は「評価はしている」としながらも、愛のムチを入れた降板の策。両軍34安打のドタバタ勝利の重み、先発投手としての責任感、使命感…。すべてを痛感して糧とした時、佑ちゃんの正真正銘の推進力になる。【高山通史】