巨人先発の田口麗斗(かずと)投手(19)が、初めての甲子園で持ち味を発揮した。広島・新庄時代に届かなかった黒土のマウンド。「独特なものがありました。伝統の一戦に初めて投げさせてもらえて、阪神ファンも巨人ファンもすごい熱意でした」と、初々しく驚き、すぐ感傷を排した。

 初先発、初勝利の前回と同様、直球と縦割れのスライダーを低く低く集めた。浜風に乗ったスライダーの曲がりが申し分なく、相手先発の能見と渡り合った。2巡目に入った3回からペースアップし、1球あたりの投球間隔が6秒ほど。ロジンバッグも使わず、自分主導でどんどん投げた。グラブを保持する右半身を方向指示とし、狙ったポイントに真っすぐ向かっていった。簡単にストライクを稼ぎ、徐々に敵地を静まらせ、投手戦に持ち込んだ。

 5回には一時同点の適時打。変化球を流した。「必死に打った」。惜しむらくは6回。先頭の西岡に四球を与えた。1死二塁でゴメスだった。2球目のスライダーを、柔らかく左前に運ばれ決勝点となった。昨季セ・リーグ打点王は、1回にも外角低めチェンジアップに対応。中前に先制適時打していた。「経験値も違うし、持っているものも違う」。無双のイースタン・リーグではありえない対応力だった。

 変化球の精度。変化球を生かす直球の力。能見はお手本で、打たれたゴメスだって今の自分を教えてくれたと思えばいい。5回1/3、2失点で初黒星。長年しのぎを削ってきた聖地に武者が加わった。【宮下敬至】

 ▼投手の田口が11日ヤクルト戦に続いて適時安打。ドラフト制後、デビュー戦から2試合連続で打点を記録した投手は、86年5月8、15日中山(大洋)01年9月16、23日中里(中日)に次いで3人目になる。2試合の投手成績は中山、中里とも0勝1敗。デビューから2試合連続で「勝利+打点」をマークすればドラフト制後初の記録だったが、味方打線の援護がなく惜しいところで快挙を逃した。