1年先輩の貫禄だ。2年目のロッテ石川歩投手(27)が西武打線を2安打無四球で今季初、プロ2度目の完封で3勝目を飾った。制球力抜群のカーブとシンカーを有効に使い、8個の三振を奪った。今季初先発の菊池雄星投手(23)との投げ合いを制し、9連戦の最初の試合をものにした。今日29日に先発登板でデビュー戦を迎えるルーキー田中英祐投手(23)に、しっかりと勝利のバトンを渡した。

 「絶景です!!」。お立ち台に上がった石川は、決めぜりふに声を張った。音量が上がったのは、今季から改善された音響装置のおかげではない。「今日はちょっと完封したんで」。最高の気分が、石川に声を張らせた。

 立ち上がりに感じた「今日はあまり良くない」という感覚が、試合の途中で変わった。4回、初めて走者を二塁に進められた場面だ。打席は中村だった。二塁走者の栗山を見てから、本塁へ投げた。「後ろ向いてから投げたらいい感じだった」。ギアが上がった。腕が振れ、すべての球種の威力が上がった。そこから17者連続アウトで試合を終わらせた。

 カーブの質が戻ったのも好投につながった。昨年は腕を振ることを考えていたが、振りすぎて制球が乱れていた。この日は、そのバランスがしっくりいった。昨年の入団時に計測したカーブの回転数は1秒間に47回転(平均は36回転)。これは当時、その施設で計測済みだったプロアマ400投手の中で3番目に多い数字だった。そのカーブが、石川に戻ってきた。

 おかげで注目のルーキーに、いい形でバトンを渡せた。2月のキャンプ中、田中から質問されたことがあった。「体の使い方とか、似ていると思うのですが、どういう意識で投げているんですか?」。石川は自分の投げ方が田中と似ているとは思わなかったが、丁寧に質問に答えた。「悩んでいる時だったんだと思います」。乗り越えることを期待していた。

 27日に田中が1軍に合流してからも「緊張してんの?」「調子はどう?」と声をかけてきた。石川ならではの配慮だった。しかし、何よりなのはこの日の投球内容だ。「プレッシャーをかけたかな。頑張ってほしいです」。強烈なエールになった。【竹内智信】