仰天の「1日契約&無報酬」で再出発する。大リーグのレンジャーズを自由契約になり独立リーグの四国アイランドリーグplus高知に移籍した藤川球児投手(34)が8日、高知市内で入団会見に臨んだ。故郷での野球人生は報酬を辞退した上で、登板日限定のスポット契約であることが判明。背番号11を背負い、20日オープン戦、徳島・香川混成チーム戦(高知)では先発でデビュー登板を予定。NPB復帰も見据えながら、新天地での意気込みを語った。

 高知城から8分歩いた、幕末の土佐藩主、山内容堂ゆかりの屋敷跡にある旅館が舞台だった。阪神で一時代を築き、メジャー挑戦していた藤川が故郷で日本球界復帰の第一声を発した。古巣タイガースではなく、驚きの独立リーグ入団。一本気な男らしく、球児が胸中を明かした。

 「自分が決断するとき一番大切にすることは、迷わない、後悔せず決断することが自分の人生の軸になっている。周りの人は普通じゃないと思うかもしれないけど、当たり前の概念にとらわれると新しいことを生み出せない」

 前日7日、すでに高知の練習に初参加。高知市内から約1時間、車で揺られながら西部の越知町に向かっているときだ。仁淀川でバーベキューや川遊びに興じる家族の姿が映った。子どものころの自らにだぶらせ「自分たちの子どもは米国にいるけど、もうすぐ夏休み。1つの家族として夏を満喫したい。もう1つ、自分は野球選手としての顔がある。自分を使って、高知の子どもたちに何かのきっかけになるかもしれない。そう考えて、ここが一致した」と説明した。

 実は前例なき「1日契約」を結んでいた。梶田宙球団社長は「無報酬です。1試合ごとの契約になり、1試合のチケット(収入)10%を児童養護施設に寄付します」と説明した。独立リーグの選手は通常、1年契約で月給約10万円を支給されるが辞退。登板日限定のスポット契約になる。収入は0円。入場券発売の一部で社会貢献する異例の「男気(おとこぎ)契約」だ。

 しかし、野心も失っていない。5月末に阪神のオファーを断ったが、7月31日までは全球団と契約可能な、NPB復帰の門戸を今も閉ざしていない。20日の実戦では先発登板を希望。「バリバリ投げられる。選手として純粋に高みを目指してね。必要とされていることが一番。力を発揮できていると感じれば他球団、すべてのここのレベルより上のチームからオファーがあるか、ないか。必要だと言ってもらえたら、しっかり話をして」と胸を張った。阪神史上最多の220セーブ。その実力を周囲に見せつける意気に燃えている。

 背番号「11」は自ら希望した。幼いころに憧れた巨人斎藤雅樹(現投手コーチ)がつけた番号だ。野球を愛する心は揺るがない。ふるさとから新たな1歩目を踏み出す。【酒井俊作】

 ◆藤川の年俸 98年にドラフト1位で阪神に入団した際は契約金9000万円、年俸720万円。05年に46ホールドで、2200万円から8000万円にアップ。07年1億7000万円。08年2億8000万円。09~12年は4億円。13、14年カブスでは2年総額950万ドル(当時のレートで約7億6000万円。現在のレートで約11億9000万円)。15年レンジャーズでは年俸100万ドル(約1億2500万円)だった。(金額は推定)