正捕手への再スタートだ! 阪神梅野隆太郎捕手(24)が5月19日巨人戦以来、31試合ぶりのスタメンで発奮した。2点ビハインドの4回2死一塁。「打てる捕手」が戻った瞬間だ。

 あごを引き、全力疾走で一塁へ駆けだした。「高さがどうかなと思っていたけれど…」。右翼へ向かうライナーはフェンスのギリギリ上を通過した。ヤクルト成瀬を前に2球で2ストライク。「積極性のない2球。不利なカウントからでもつないでいこう」と腹をくくった3球目だった。ダイヤモンドを1周すると、これまで迎える側だったベンチ前で仲間の祝福を受けた。3号同点2ランで表情が一気に明るくなった。

 「気合も入っていたし、緊張していました」

 ようやく巡ってきたチャンスに必死だった。新人だった昨季は捕手最多の92試合に出場。今季も開幕当初は正捕手だった。約3カ月前には保証されていた「先発」が、今となっては緊張する。5月24日にはプロ初の2軍落ちを経験。世界がガラリと変わった。

 24歳の誕生日を迎えた6月17日。1軍は全体練習が休みで、梅野も同様だった。記念の日も静かに過ごした。唯一の外出は鳴尾浜の寮近くにある温泉施設。後輩の北條と足を運び、心と体をいやした。1軍に同行しながら出場機会に恵まれず、翌18日は2軍戦への出場が決まっていた。昨年の誕生日は1軍でバースデー適時打。誕生日ソングの大合唱に感激した。置かれた立場の変化を受け止め、梅野にできるのは準備しかなかった。

 「それ(本塁打)がすべてではないので、反省すべきところはしっかり反省してやっていきたいです」

 少し心が晴れた本塁打だろう。それでも同期、同学年の岩貞ら投手陣を勝利に導けず、責任をかみしめた。再び目指す正捕手へ道。梅野はおごることなく、その階段に足を伸ばす。【松本航】