セ界の顔が躍動した。全セのDeNA筒香嘉智外野手(23)が初出場のオールスターで鮮烈デビューを果たした。4番左翼で先発。日本ハム大谷から史上初となる「初出場での4番で初打席初安打」をマークした。先制のホームを踏むと、3回1死満塁で左犠飛を放ち打点も挙げた。試合前のホームランダービーでは、準決勝でヤクルト山田を、この競争の最多記録となる9本で一蹴すると、決勝は6本でソフトバンク柳田を退け“本塁打キング”に輝いた。

 文句なしの大活躍だった。筒香が大谷を打ち砕いた。2回先頭で打席に入ると、カウント0-2からの3球目を捉えた。外角低めの153キロ直球。「真っすぐは、振り遅れる。フォークぐらいのスピードだったら打てるかもしれない。今日はホームランを狙いたい」と、打球はぐんぐん伸びてスタンドインぎりぎりのフェンス直撃の二塁打を放った。シーズンから続けている理想通りの逆方向への一打は、オールスター史上初の「記念打」になった。

 予兆は試合前から十分にあった。ホームラン競争でも球界の猛者たちを一蹴。山田との準決勝は、巨人阿部を打撃投手に同競争最多となる9本塁打でスタンドを沸かせた。決勝では、本拠地・横浜スタジアムでの交流戦でスコアボード直撃弾を浴びているソフトバンク柳田と対決。ここでも6本-3本のダブルスコアで退け、優勝賞金50万円を勝ち取った。「新記録の9本を打てたことは素直にうれしい。ホームランへの思いは4番を打っているのでやっぱり特別なものがありますね」と満足げに振り返った。

 前半戦を首位で折り返したDeNAの4番であり、全セの4番として、気迫の“強行出場”だった。15日の巨人戦で右肘に死球を受け、試合後、横浜市内の病院に直行。右肘は内出血でゴルフボール大に腫れ上がっていたが痛み止めで封じた。この日は、左翼ではなくDHでの出場も検討されたが、試合前に全セを率いる原監督との話し合いで左翼での先発を決断。「4番を打たせてもらうからには責任がある。それはDeNAでもオールスターでも同じ。ファンの方々にも選んでいただいた感謝がある。腫れはあるけど関係ない」と、23歳の目は真剣そのものだった。

 原監督も「久々に、メジャークラスのホームラン競争を見た」と興奮気味にたたえた。ファンを喜ばせる野球人の本分を理解し、飛距離、技、使命を存分に発揮した。【為田聡史】

 ▼球宴初出場の筒香が4番左翼で先発。球宴デビュー戦でいきなり先発4番は14年第1戦エルドレッド(広島)以来9人目。日本人選手では10年第1戦多村(ソフトバンク)以来5人目になる。筒香は第1打席で二塁打。デビュー戦で4番を打った過去8人の中で、94年第1戦松井(巨人)と14年第1戦エルドレッドが安打を記録したが、2人とも初安打は第2打席。デビュー戦で4番に座り、第1打席で安打は筒香が初めてだ。

 ◆ホームランダービー 出場選手をファン投票で選び、トーナメント方式で1選手7アウト制となった08年以降、これまでのラウンド最多本数は12年第1戦(京セラドーム大阪)準決勝でバレンティン(ヤクルト)中村(西武)が放った各8本だった。