エースが力尽きた。広島前田健太投手(27)が、巨人戦で力投を見せるも打線の援護なく敗れた。今季6敗目は、マツダスタジアム初黒星。今季5度目の対戦となった巨人に2勝3敗となり、菅野との直接対決は1勝3敗となった。しかし、敗れはしたものの、今後も対戦が続く相手に好感触は与えない投球は見せた。

 広島前田が力を振り絞って投じた117球目は、代打高橋由のバットを押し込んだ。しかし、力ない左翼線への飛球は、後退していた左翼野間が全力で前進する前方にポトリと落ちた。本塁ベースカバーに走った前田は視線を落とし、そして夜空を仰いだ。

 「悪い球かいい球かではなく、打ち取ればいいこと。最終回は0に抑えて帰ることができず、悔しい」

 言い訳はしなかった。この日は立ち上がりから我慢比べを余儀なくされた。「途中まで最悪だった」と振り返るように、序盤3回まで毎回走者を背負った。マウンド上で首をひねる場面が見られるほど苦しい投球が続く中、スライダーを軸とした投球でしのぎながらフォームの微修正を重ねた。6回は片岡、坂本から連続三振を奪うと、8回まで3イニング連続無安打と尻上がりに調子を上げた。しかし、球数が100球を超えた9回に力尽きた。3連打を浴びるなど2点を失った。

 9回裏に会沢がソロを放つも反撃及ばず、菅野と直接対決は4度目も1点差試合となった。結果は1勝3敗。今季、マツダスタジアム初黒星も喫した。緒方監督は「(前田は)しっかり投げてくれた。点をやるまいという気持ちが伝わってきた」と完投のエースをかばった。

 打線は前田同様、立ち上がりに苦しむ菅野から序盤に得点機をつくりながら、あと1本が出なかった。今季の1点差試合は14勝22敗と大きく負け越している。巨人とは今日からも2試合。今後も1週おきに週末3連戦が予定されている。接戦を勝ちきることができなければ、混戦を抜け出すことはできない。【前原淳】