ヤクルト畠山和洋内野手(32)が、豪快な1発を甲子園の夜空に描いた。1点リードの3回1死一塁。1ストライクからの2球目だった。阪神先発メッセンジャーの真ん中高めに抜けたスライダーを捉えた。「たまたまだよ。変化球が抜けてきた高めのボールだったけど、上からしっかりとたたくことができた」。リーグトップの山田に3本差と迫る21号2ランを左翼席に放り込んだ。

 真中監督の“ゆとり教育”が実った。試合前の打撃練習では、前日7月31日から2日連続で志願者のみの自主練習とした。「これだけ暑いと、試合でパフォーマンスできないと困るからね」と説明。気温36度を超える灼熱(しゃくねつ)の甲子園。体力消耗にもつながると考えた。2日連続で回避した畠山は「こういう日があってもいいかなと思う。本当はやらないといけないんだけどね。ゲームにしっかり入っていける状態なら問題ないのかもしれない」と効果を語った。

 力を蓄えた畠山が、打線をけん引した。2点リードの8回には、左中間フェンス直撃の二塁打。次打者の雄平の中前適時打を呼び込んだ。前日は、4時間超のシーソーゲームを落とし、3位に後退。だからこそ、畠山は「昨日がああいう展開だったから、今日ももしかしたら負けていたかもしれない。粘って勝てたのは大きい」と終盤での追加点の大切さを説いた。

 今季0勝6敗と相性の悪い甲子園で、ついに鬼門を突破した。真中監督も「今までは雰囲気で持って行かれていたのかもしれない。何とか勝てたから、明日につなげていきたい」。指揮官の気配りが功を奏し、甲子園の舞台でやっと笑顔になれた。【栗田尚樹】