左手人さし指を負傷した中日山本昌投手(50)が10日、再起を誓った。「突き指」による22球降板から一夜明け、炎天下のナゴヤ球場で練習。予定通りに出場選手登録を抹消されたが、1軍のマウンドに向けて再び動きだした。今日11日にバースデーを迎えて、史上初となる「50歳プロ野球選手」が誕生。夢の終わりはまだ先だ。

 痛々しかった。練習を終えた山本昌は悔しそうに患部を見つめた。「昨日よりも腫れてる。しょうがないね」。負傷降板の原因となった左手人さし指は、前夜の試合直後に比べ明らかにふくれ上がり、指先は内出血しているようにも見えた。

 普通なら気持ちが切れてしまいそうな苦境だが、やはり山本昌はポジティブだ。「まあ、動けないわけじゃないからね」。ショッキングなアクシデントから一夜明け、この日は午前中から2軍練習に参加。キャッチボールなどボールを握ることはなかったが、若手選手にまじってアップに加わった。

 口には出さなくとも、練習参加が「次回登板」に向けた準備に他ならない。前日の試合後には森ヘッドコーチが「ファームでまた投げないといけない。先発枠も足りてないのでもちろん次も考えている」と発言。今季中の1軍再登板を視野に入れた。

 ただ、道は険しい。左手人さし指のケガが完治しても、そこから投球練習を再開し、2軍戦で実戦を重ねる必要がある。山本昌も自身を「古いパソコン」と評しており1度“停止”すると“起動”には時間がかかる。シーズンも終盤に入りつつあるこの時期を考慮すれば、残り時間はそう長くはない。今季中の世界最年長勝利達成は次回が「ラストチャンス」となる可能性もある。

 「とりあえず経過を見ながら、頑張ります。腫れが引いたらボチボチやるよ」。今日11日に50歳の誕生日を迎えた。40歳が「四十にして惑わず」の不惑(ふわく)なら、50歳は「五十にして天命を知る」の知命(ちめい)。山本昌は、まだ折れない。プロ野球選手としての使命を最後まで貫く。【桝井聡】

 ◆山本昌の22球降板 9日ヤクルト戦(ナゴヤドーム)。世界最年長勝利を目指して今季初登板したが、1回2死三塁から5番雄平への初球カーブを投げた際に左手人さし指を自身の体にぶつけて突き指。2回の先頭大引に3連続ボールを投げたところで、ベンチに異変を訴えた。22球での負傷降板となった。なお、この登板で自身が持つ出場、登板、先発の最年長記録を更新。1軍に出場した実働年数は29年となり、工藤(西武)のプロ野球記録に並んだ。