体力の続く限り-。勝負の12連戦を前に、ベテラン右腕が優勝への思いを短い言葉に込めた。阪神福原忍投手(38)が、今日18日DeNA戦(横浜)から始まる連戦で大連投を辞さない気構えをみせた。今季はすでに55試合登板。39歳シーズンの過去最多登板は61試合で、連戦中に塗り替える可能性がある。栄光と挫折を経験してきた男が、身を粉にして、悲願Vをたぐり寄せる。

 鋼の心と体で、過酷な12連戦の中、Vロードを切り開いていく。17日、大粒の雨が降り、分厚い雨雲が覆った甲子園の空模様とは相反して、福原の表情は明るかった。甲子園の新室内練習場で安藤、藤井、福留らベテラン勢とも笑顔で言葉を交わし、勝負の時へ準備を進めた。

 「頑張ります。体力の続く限り」

 横浜に向かう直前に残した力強い言葉。思いが詰まっている。今日18日に始まる大連戦。その1試合1試合で、V情勢が大きく左右される。首位ヤクルトと3位巨人との状況により、藤浪が中4日で先発ローテを回るプランも浮上している。他の先発投手も登板間隔を詰め、12連戦に臨んでいく。必然的に球数制限が発生し、救援陣に託される任務も重みを増す。連戦連投を期する思いを「体力の続く限り」と表現した。

 福原の連続登板は4日間が最長。11年9月7日広島戦~10日ヤクルト戦と14年9月24日DeNA戦~27日ヤクルト戦の2度ある。経験のない5日以上の連続登板もいとわない。ブルペンで万全の状態で出番を待つだけだ。

 「(記録について)全然考えてないよ。本当に1試合、1試合に準備するだけだから。普通に、と言っても、もう後がないし試合数もないからね」

 福原の視界にはリーグ制覇しか映っていないが、実は快挙も目前に迫っている。セ・リーグ初となる39歳シーズンでの60試合以上登板だ。現在55試合に登板。残り5試合で偉業が達成される。さらに、パ・リーグでは39歳となるシーズンに12年ロッテ薮田が61試合登板している。39歳シーズン最多登板試合を更新する可能性がある。

 プロ16年目の昨年は12年以来、2度目の60試合登板でリーグ最多の42ホールドポイント。初タイトルとなる最優秀中継ぎ投手にも輝いた。今季も37ホールドポイントを稼ぎ、リーグトップの座に君臨する。だが、順風満帆な野球人生だったわけではない。先発でキャリアハイ12勝を挙げた翌年の07年には成績が暗転。08年には右手人さし指を骨折した。低迷する中、中継ぎに転向。酸いも甘いも経験してきた。

 苦しみ、はい上がってきたチーム最年長右腕。王者の冠を目指し、腕を振る。【宮崎えり子】

 ◆球界の主な年長投手の活躍 中日の山本昌は49歳11カ月の今季8月9日ヤクルト戦に先発し、プロ野球最年長出場記録を更新。41歳1カ月だった06年9月16日阪神戦でのノーヒットノーランは、最年長記録。巨人在籍中の工藤公康は、40歳以上で2桁奪三振7度のプロ最多記録を誇る。広島の大野豊は98年、42歳7カ月で史上最年長開幕投手を務めた。阪神では下柳剛が満40歳となる08年、史上5人目の40代2桁勝利(11勝)をマーク。41歳の09年8勝、42歳の10年も7勝とローテーションを守り続けた。