執念を実らせた。ロッテ涌井秀章投手(29)が今季最終戦で延長10回を6安打3失点に抑え、15勝目で日本ハム大谷と並ぶ最多勝を手にした。自身6年ぶり3度目だが、ロッテでは移籍2年目で初めて。ただ、137球を投げた。当初は、中4日で11日の日本ハムとのCS第1ステージ第2戦に先発予定だったが、登板日程が変更される可能性が出てきた。

 勝ち越しを見届け、涌井はようやくベンチに下がった。3-3の延長11回。1死一、三塁となり、裏の登板に備え、キャッチボールを始めた。そこから2者連続四球で決勝点が入った。緊張を解くように、口元にかすかな笑みをたたえた。結局、11回だけで6得点。「本当は、すんなり終われば良かったけど、たくさん点を取ってくれた。最後の最後、感謝、感謝の最多勝です」と、素直に喜んだ。

 予想だにせぬ展開だった。6回に2点を勝ち越され、降板のつもりだった。ところが、直後の7回、味方が2点を奪い追いついた。再び、続投態勢。そこからは、伊東監督も「勝ち越せば交代」と決めたが、両軍無得点が続いた。落合投手コーチからも「ここまで来たら絶対代わるな」とハッパをかけられ、交代機がないまま137球を投げ抜いた。

 前回1日の日本ハム戦で14勝目。その3日後、チームはCS進出を決めた。その時点で、中4日のこの日を回避し、10日の第1ステージ初戦に備えることもできた。だが、伊東監督の打診に、自ら最多勝を狙うことを志願。1年の労に報いる意味も込め、伊東監督は受け入れた。

 137球をどう見るか。落合投手コーチは、CSローテを「白紙です」と明言。疲労を考慮し、第2戦ではなく、中5日で第3戦に待機させる可能性はある。

 ただ、涌井本人は涼しげだった。「順位が決まらない中、ここに合わせて調整してきた。投げずにCSに行くのと、投げて行くのとあるけど、試合感覚は投げないと分からない」。力投タイプではない。投げるスタミナもある。「FAで来て、先発にこだわってやってきた。(最多勝は)先発の栄冠」とも言った。中4日の第2戦も「直訴しようかな」と、当たり前のように言った。周囲の想定を超えたところにいる。CSで打たれれば、最多勝を優先したからと言われかねない。ビシッと抑えて、雑音を封じる。【古川真弥】

 ▼涌井が15勝目を挙げ、日本ハム大谷と並び最多勝を獲得した。涌井の最多勝は西武時代の07年(17勝)09年(16勝)に次ぎ3度目。2球団で最多勝は08年のグライシンガー(巨人)岩隈(楽天)以来7人目。最多勝を通算3度は松坂(西武)らに並ぶ5位タイになる。涌井は延長10回まで投げる執念が実ったが、ロッテの先発投手が延長まで投げたのは10年9月4日日本ハム戦でペンが10回まで投げて以来5年ぶり。