ロッテが正遊撃手候補を手に入れた。ドラフト1位で仙台育英(宮城)平沢大河内野手(3年)を指名。地元・仙台の楽天と競合したが、伊東勤監督(53)が残りくじで交渉権を獲得した。スカウト陣には投手の指名を推す声が多かったが、センターライン強化を訴える指揮官の希望が優先された。伊東監督は、即戦力として、元中日立浪級の評価を与えた。

 先に、隣の楽天立花社長が敗北を宣言していた。両手を両膝につけ、ガックリ。それを横目に、伊東監督はくじを引いたのと同じ右手の拳を小さく握った。「最高です。残り物に福がありました。立花さんはくじ運が強い。どうかなと思ったけど、今回は運が向いてくれた」。抽選3連勝中だった強運の持ち主に勝った。顔は少し紅潮していた。

 早くから指名を公表した楽天に対し、非公表を貫いた。投手指名の予想が多く、実際、スカウト陣には投手の1位指名を推す声が多かったという。先発のコマが足りず、即戦力を補充したい考えはあった。それでも、伊東監督は「随分早い段階から、二遊間を守れる選手が必要と思っていた」と希望を通し、楽天単独指名の空気を驚かせた。

 正二塁手クルーズは退団の可能性が高まっており、補強が急務。遊撃は26歳の鈴木だが「内野陣がなかなか育っていない。選手はいるが、刺激を与えて、相乗効果で若い選手と競争し、その中で勝ち上がってくることがチームに必要」と狙いを口にした。仙台育英カラーの紺色のカバンを手に会場入り。2年前のドラフトで巨人と競合した東京ガス・石川を引き当てた時と同じ、息子の桜色のネクタイを締めて験も担いだ。

 高い評価ゆえの指名だ。「3拍子そろう。高校、大学、社会人を含めても全野手でNO・1。即戦力。ショートで」と迷わず言った。来年以降の候補と比べても、平沢ほどの野手はいないという判断があった。「立浪に近い。左打ちだけど、左投手を苦にしない、良いバッティング。まずは、守りから力をつけて。プロのスピードに慣れるのが最初」と、高卒1年目から遊撃の定位置を獲得した名手になぞらえ、来春1軍キャンプのプランも明かした。今日23日には、自ら仙台へあいさつに赴く。投手よりも野手。指揮官の決断で、近未来を託す逸材をゲットした。【古川真弥】