国内フリーエージェント(FA)権を保持する日本ハム武田勝投手(37)が2日、権利を行使せず残留することを表明した。2軍本拠地の千葉・鎌ケ谷で球団と交渉に臨み、年俸1億1000万円から減額制限(年俸1億円以上は40%)を超える7000万円減の4000万円プラス出来高払いで合意。大幅減俸よりチームへの愛着が勝った。今季国内FA権を取得した矢野謙次外野手(35)も、残留を表明した。(金額は推定)

 あふれんばかりの「ファイターズ愛」が決め手だった。スッキリした表情で武田勝は決断した理由を話した。「ひと言で言うと、ファイターズが好きだからです」。水面下で提示されていた来季年俸は、減額制限を大幅に超える7000万円減。心は揺れた。家族やチームメートにも相談するうちに、自分の正直な気持ちに気づいた。「ファイターズで野球人生を終えたい。ファイターズにいることが、しっくりくる」。10年間を過ごしたチームへの愛着、思いは揺るがなかった。

 視線はすでに新たなシーズンへ向いている。来季で38歳。武田久とともにチーム最年長となる左腕は、ベテランしかできない役割を心得る。「自分の経験を伝えたい。技術や力があっても1年間戦い抜くのは難しい」。プロ通算82勝の実績、先発に中継ぎと豊富な経験がある。「大半はメンタルの部分ですね」と、これまで日本ハムで蓄積してきた経験値を後輩へ惜しみなく伝授するつもりだ。

 貴重なアドバイスを送るためには、自らが最前線に立つことも重要と説く。「チームに貢献するには(自分が)一線でプレーすることが大事」。予想される激しい競争を勝ち抜く覚悟もある。「春のキャンプで2月1日から体が動く状態にしたい」と、今オフの自主トレプランを練る。今季は台頭する若手に埋もれる形で、プロ最少の9試合登板にとどまった。「チームは若手に切り替えて動いている。その中で貢献できるポジションを模索しながら、どこでも出来るようにしたい」。何にも勝るチーム愛で、現状打破へ向かう。【木下大輔】