来季のセットアッパー候補、阪神歳内宏明投手(22)が高知・安芸キャンプ最後の紅白戦で猛アピールだ。紅組の2番手として4回から登板し、2回1安打無失点。キレのある直球で3三振を奪った。金本知憲監督(47)の「拡大クローザー構想」でも注目を集める若き右腕。来季の「勝利の方程式」入りへ、実りの秋となった。

 期待の背番号26が二重丸の投球でキャンプのラスト登板を締めくくった。この日、1人目の打者森越を外角139キロで見逃し三振。2死からは小豆畑を3球で追い込み、141キロで空振りの三振。続く5回には1死から北條を外角138キロで2つ目の見逃し三振。北條のバットはピクリとも動かなかった。

 「今日はこのキャンプで一番良かった。見逃し三振を取れたのが良かったですね」。3つの三振はすべてストレートで奪ったもの。球速は140キロ前後だが、コース、キレは申し分なし。伸びのある直球は、やはり歳内の最大の武器だ。

 進化した姿も見せた。香田投手コーチは「彼にはフォーク(スプリット)もある。そこに持っていくために、スライダー、カーブでどうカウントを取るか」と課題を挙げてきた。この日はカウントを整えるための球種として磨きをかけるスライダーを多投。投球の幅も広がりつつある。

 新指揮官の思いを背中に感じる。金本監督はこれまで「若手を使いながら呉昇桓も使うのが理想」と発言。呉昇桓の残留を前提として、セーブ状況でも精神的に楽な展開であれば、歳内や松田を抑えとして抜てきしたいという思いを明かしている。来季は「拡大クローザー構想」の1人として9回のマウンドに立つ可能性もある。

 「今年は後半(1軍に)いましたけど、勝ちパターンで投げることはできなかった。そこに入っていかないといけない」。ベテラン安藤、福原の壁は厚い。だが、着実にステップアップしている実感がある。来季こそは殻を破る。期待たっぷりの秋だ。【桝井聡】