怒っていたはずなのに…。日本ハム中田翔内野手(26)が4日、札幌市内の球団事務所で契約更改交渉を行い、2億4500万円プラス出来高払い(推定)でサインした。4500万円増で、希望額には届いておらず、交渉は約1時間にも及んだ。浮かない表情で会見に臨んだが、そこは千両役者。軽妙なトークで周囲を笑わせ、爆笑を巻き起こして帰路へと就いた。

 表情が険しい。怒気を含んだオーラが、体をまとっている。約1時間のロング交渉。中田は確かに、機嫌が悪かった。「自分が思っていた希望額とは、ちょっと違いました」。4500万円増の2億4500万円。チーム最高年俸となったが、歯切れは悪い。それでも本塁打数、打点数、タイトルなどにインセンティブがついたことで、最後は納得した。

 交渉の「中盤くらい」(中田)に、出来高をつける契約に話が進んだ。提示額は希望と開きがあり、インセンティブがなければ「たぶん、はんこ“ぶち折ってる”」と保留も辞さない覚悟だったが、ノルマを設けられることで闘志に火が付いた。「自分にプレッシャーをかける意味でもいい」と考え直した。

 来季へ向け「いまはインセンティブのことしか考えていない。全部かっさらったろかな」とほえたあたりから、会見場の雰囲気はおかしな方向へと流れていった。年俸増額で欲しいものを問われると「すべて手に入れちゃってるんで…」とニヤリとし、「馬でも買おうか」と珍発言。さらに、名前は「ジャッキー」と即答。「ジャッキーが別のルートでお金を稼いでくれれば」と、希望額へ届かなかった分を、愛馬でちゃっかり“補填(ほてん)”しようとたくらんでいた。

 すべらない話を繰り広げ、怒りもある程度落ち着いたのか、中田は打倒ソフトバンクに気持ちを切り替えた。「今季の悔しさを、みんな忘れていない。それをぶつけたいし、やり返したい。栗山監督を男にしたい」。今季は9勝15敗と6つの負け越し。個人的にも、ソフトバンク戦は打率1割7分8厘、33三振と足を引っ張った責任を感じている。「チームがひとつになって戦えば、勝てる」と言い切った。

 自己最多30発は放ったが「もっと結果を残せた」という思いの方が強い。今季を上回る成績を残せば、リーグ制覇にも、出来高獲得にも近づく。「ジャッキー」の出走を待たずに、自身のバットで夢をつかむ。【本間翼】

 ◆野球界と馬主資格 現役ではDeNA三浦大輔が有名で、11年に現役としては初めてJRAの馬主となり、リーゼントブルースが12年6月に初勝利。大魔神こと佐々木主浩氏は現役引退後、06年にJRA馬主免許を取得し、13年ヴィクトリアマイル(G1)をヴィルシーナで制した。日本ハム投手コーチに復帰した吉井理人氏は13年11月、JRA馬主になったことをブログで発表した。