【ホノルル(米ハワイ州)13日(日本時間14日)=細江純平】巨人菅野智之投手(26)が16年の進化論を「直球への執着」とした。毎年、成長のため工夫を加える投球技術。昨年11月の国際大会、プレミア12で日本ハム大谷らから見て学んだ投球動作を参考にしている。大谷のフォームを取り入れ、直球に磨きをかけ、また新たなスタイルでシーズンに挑む。

 テーマにブレはなかった。菅野が練習後、火照った体を冷ますことなく、今季の投球スタイルを熱く語り始めた。「球速じゃないけど、真っすぐが良ければ変化球も生きてくる。プレミア12の時に忘れかけていた部分を思い出せた。そういうのも含めて、今までの印象と違ったピッチングをしたい」と迷いはなかった。

 真の本格派投手へ再び歩み出すきっかけは、自分より世代が下の投手からだった。大学時代は最速157キロを記録したが、プロ入り後はバランスを重視し140キロ後半にまとめていた。だが、昨年のプレミア12で、剛速球派の日本ハム大谷と楽天則本からあるポイントを見つけた。

 「2人は踏み出した左足が地面に着いた後、前に力を出していくタイミングで足を後ろに引いている。そこで力を出していると思った」。レッドソックス上原、レンジャーズのダルビッシュにも共通していた。大学時代にあった「捕手に向かって体重を前に伝える」という大切さを思い出した。自身も大会中にプロ入り後、最速の155キロをマーク。その後もフォームの参考にするため、2人の動画を見て研究を繰り返し、質の高い直球を目指すことにした。

 ハワイでは「16年度版菅野」を完成させるためにトレーニングに工夫を加えた。三塁前のバントを、全身使って一塁へ全力で送球するトレーニング。さらに腕を中心とした上半身の筋トレを8種目以上こなす。疲労で腕がパンパンになった状態で100メートル以上の遠投をする。「真っすぐをもう1度磨くため。見て分かるように、遠投だったりウエートトレーニングを含めて順調にいっている」と手応えを口にした。

 毎年テーマを大きく変化させる。「相手も研究をしてくる。そういう意味でも去年と同じことをやっていてはいけない」。進化し続ける菅野だからこそルーキーイヤーから3年連続で10勝以上の成績を残せている。成長のためなら何でもする。さらなる進化を求め、今年もまた生まれ変わる。

<菅野の進化論>

 ◆1年目オフ 投球時に手首が寝ることによって、直球がシュート回転することを修正点に挙げ、右手の手首を立てることを意識した。理想の球筋を追い求め、直球のキレ、威力ともに向上。開幕6連勝と好スタートを切った。

 ◆2年目オフ 前年、シーズン終盤に離脱した反省から、夏場以降にピークを合わせるように調整した。攻めの組み立てもシンプルを重視し、球数が減少。先発ローテを1年間守り抜き、防御率は2・33から1・91と安定度が増した。