6カ月ぶりの肉声は、完全復活宣言だった。昨年8月に右肩を手術したソフトバンク松坂大輔投手(35)が28日、福岡市の西戸崎合宿所で自主トレを公開し、強めのキャッチボールを行うなど回復ぶりをアピールした。状態はメジャーに挑戦した07年に近いと、自信たっぷりに復活の手応えを告げた。1年の沈黙を経て、今年こそ日本復帰を飾る。

 ミットを鳴らす音が半年前とは別物だった。真っ白なウエアの松坂がバッテリー間の距離で力強くキャッチボールを行った。駆けつけた工藤監督、大勢の報道陣の前で力強く腕を振った。25分間、最大40メートルの距離でのキャッチボール。ブルペン入りこそ見送ったが、復活を印象づけるのには十分なデモンストレーションだった。

 松坂 ボールを投げることに対して不安、痛みがない感覚はいつ以来だろうな…。米国に行った年ぐらいですかね。自信もそうですし、医学的には100%(投げられる)。安心してキャンプに臨める。

 西武からメジャーに挑戦し、レッドソックスで15勝を挙げた07年以来、9年ぶりの状態のよさだという。「不安もあったが、今はやってよかったと思います」。昨年8月、関東地方の病院で右肩にメスを入れた。実戦復帰まで6カ月、35歳で重大な決断だった。

 リハビリは米国で行った。11月中旬からボールを投げ始めた。年が明け、暖かいハワイを中心にトレーニング。回復も早く、すでに遠投は90メートル、ブルペンにも2度入っている。「量っていませんが、3、4キロは落ちてると思いますよ」。食事面も考え、スリムな体で帰国した。報道陣に「今年はよろしくお願いします」と冗談でなごませるなど、本来のはじける笑顔も戻ってきた。

 手術後ということもあり、日本一軍団の春季キャンプでは主力ではないB組スタートが濃厚だ。本人にはリハビリ、スロー調整という意識はない。「開幕ローテーションに入れるように、しっかり勝ち取っていきたい」。摂津、武田、中田、バンデンハーク、和田、大隣ら、12球団一の布陣を誇る投手陣の競争に勝ち抜くイメージを持てるほど、自信を取り戻した。

 開幕直前のリタイアで、昨年は公式戦で1試合も投げられなかった。3年12億円で契約した2年目は、その悔しさも苦しさも十分に取り戻せる状態にある。右肩手術を乗り越えた怪物がいよいよ復活する。【石橋隆雄】

 ◆大リーグ時代の故障 レッドソックス時代の08年5月に右肩痛で故障者リスト(DL)入りして以降、毎年のように故障に苦しんだ。09年は右肩疲労で2度のDL入り。10年は背中や首を痛めて開幕を初めてDLで迎え、6月には右前腕張りでDL入り。11年は5月に右肘靱帯(じんたい)を痛め6月にトミー・ジョン手術を受けた。13年に在籍したインディアンス(マイナー)でも左脇腹痛めDL入り。メッツ時代の14年も右肘痛でDL入りした。

<日本復帰後の松坂>

 ◆入団会見 14年12月5日、福岡市内で入団会見。推定年俸4億円プラス出来高で3年契約。大谷(日本ハム)との対戦を希望。

 ◆キャンプ 2月1日、キャンプ初日に報道陣を締め出し、ブルペンで約30分の立ち投げ(捕手を立たせての投球)。

 ◆甲子園で勝利 3月4日、阪神とのオープン戦(甲子園)に先発。3回4安打無失点で勝利投手に。最速は146キロ。

 ◆巨人戦 3月10日、巨人とのオープン戦(長崎)に先発。3回で3盗塁を許し、3安打2失点。

 ◆ジキルとハイド 3月17日、ロッテとのオープン戦(ヤフオク)に先発。先頭から4連打で3失点も、2回から6回は無安打。最速145キロ。

 ◆離脱 3月18日、インフルエンザB型でチームを離脱。

 ◆最後の登板 5月20日、ウエスタン・リーグのオリックス戦(高知市営)に登板。2回を32球で2安打1失点。最速142キロ、2奪三振。

 ◆手術 8月18日、関東地方の病院で「右肩関節唇および腱板(けんばん)クリーニング術」、「ベネット骨棘(こっきょく)切除術」、「後方関節包解離術」を受けた。