【ピオリア(米アリゾナ州)4日(日本時間5日)=本間翼】日本ハム大谷翔平投手(21)が、メジャーの伝説的投手から金言を授かった。通算601セーブを誇るパドレスのトレバー・ホフマンGM特別補佐(48)が投手陣へ向け、代名詞チェンジアップの握り方や精神面をアドバイス。最前列で聞いた大谷は、今キャンプで重点的にチェンジアップに取り組んでいることもあり、感銘を受けた。

 練習をストップして、投手陣の輪ができた。メジャー歴代2位のセーブ数を誇る元守護神、パドレス・ホフマンGM補佐の言葉が、次第に熱を帯びる。代名詞とも言えるチェンジアップの握り方を惜しげもなく披露し、17分間もノンストップでしゃべり続けた。大谷は、一言一句も聞き漏らさぬよう、最前列で直立していた。「教えてもらう機会なんてなかなかない。勉強になりました。握りを見られるということもないですから」。米国キャンプでしか絶対に味わうことのできない、濃密な時間だった。

 出会ったタイミングにも、縁があった。大谷は今季、チェンジアップの割合を増やそうと、キャンプでは精力的に練習している。メジャートップクラスの使い手の言葉は、胸に響いた。「自分の今試しているものがあるので」と、すぐに「ホフマン流」に握りを変えることはないが「いいものは取り入れたいです」と、大切に“引き出し”にしまった。

 さらにマウンドでの立ち居振る舞いや失敗を恐れないこと、リーダーの必要性など、精神的な部分での忠告にも、話は及んだ。栗山監督は「話してくれることはすごく理にかなっていると思うし、すごい人たちが語ってくれるというのは、同じことを言われたとしても選手への入り方が違う」と感謝した。

 直接会話したのはあいさつ程度だったが、ホフマンGM補佐は「印象的にはすごい素直な性格で、いい子だなと思う。これだけ才能があるのに」とベタ褒め。この日は投球練習こそなかったが、59スイングで20本の柵越えを放ったフリー打撃も間近で見て「両方の才能があって、両方で成功できれば本当に素晴らしいと思います」と、練習後にはすっかりとりこになっていた。

 今日5日(日本時間6日)のオフを挟んで、6日には紅白戦での打者出場、10日には初実戦マウンドも控える。ほぼチェンジアップと140キロ前半の直球だけで601セーブを挙げたレジェンドに感銘を受けた大谷は、「なかなか簡単ではない努力をしてきたんだろうなと思います。自分もそうなっていけたらいい」。うまくなりたいという純粋な思いは、ますます強くなった。

 ◆トレバー・ホフマン 1967年10月13日、米カリフォルニア州出身。89年ドラフトでレッズ入団。キャリアのほとんどを93年にトレード移籍したパドレスで過ごし、98年と06年にセーブ王。10年にメジャー史上初の通算600セーブを達成し、この年限りで引退。メジャー通算1035試合に登板し61勝75敗601セーブ、防御率2・87。パドレスの背番号「51」は永久欠番となった。偉大な功績に敬意を表し、大リーグ機構はナ・リーグの最優秀救援投手賞を「ホフマン賞」と名付けた。