これがエリア51だ。広島鈴木誠也外野手(21)が9日、6回からの特別ルールで行われた紅白戦でスーパープレーを連発した。レーザービームに背走ジャンピングキャッチ。打席で快音とはいかなかったが、守備で輝いた。右翼レギュラー争いは激しさを増す。

 鈴木が一瞬でボールを持ち替えると、球場は期待の静寂に包まれた。最強の肩が、ため込んだ力を一瞬で爆発させる。視線を独占した数秒後、大歓声を呼び込んだ。想定6回1死二塁。右翼で飛球を捕球し、三塁へレーザービーム。やや浅めだったとは言え、タッチアップを狙ったのがチーム屈指の俊足野間だったことも付加価値がつく。

 「距離がなかったので、野間さんありがとう、と思いました。体勢はよくなかったけど、素早く握れました。反復練習の効果が出ているのかなと思います」

 「エリア51」と言っていい。想定8回には、土生が放った右中間への大飛球に反応。盛り上がる筋肉をフル活用して斜め後ろに走り、最後は飛んだ。長打を確信していたスタンドは感嘆の声を上げ、土生は2度3度と天を見上げた。「球際の球をずっとやってきている。よかった」とビッグプレーも淡々と振り返った。

 かつて「一日一善くん」と呼ばれた“やんちゃ坊主”だった。潜在能力は抜群だが、ボーンヘッドも目立った。緒方監督から「ものすごいことをしてくれるけど、何かをやらかす」と言われたこともある。だが河田外野守備走塁コーチが就任し、考えが一変。長時間の練習でも、どんな状況でもボールを絶対に落とさないことを誓い合った。「飛んでくるな」と思っていた打球も、今は怖くない。

 緒方監督は「急に成長するわけないんだけど」と苦笑いしながらも「出せば大きなことをやってくれる。ミスがなくなればプラスは多い」と評価した。実質的に右翼は野間と鈴木の一騎打ち状態と言える。ともにポテンシャルは高い。鈴木は言う。「守れないと出られない。野間さんへの意識はない。とにかく結果を残すだけです。試合に出続けたい」。無安打だった打撃でもアピールは必至だが、才能が爆発するときは近い。【池本泰尚】

 ◆広島の特別ルール 接戦の終盤に勝負弱かった昨季の反省を生かし、紅白戦は終盤から始まる。昨年の秋季練習から取り入れている。この日は4イニングの紅白戦が予定されていたため、スコアボードにはあらかじめ5回まですべてゼロが入れられていた。また、捕手は多くの投手の球を受ける目的もあり、チームの枠を超えて守備につくことになる。