ジュリ・カットだ。ヤクルトのドラフト1位の原樹理投手(22=東洋大)が12日、新たな武器を披露した。キャンプ初のフリー打撃に登板。西浦へ投じたカットボールでバットを粉砕した。シュートに定評がある原樹だが、プロ入り後から本格的に使い始めたカットボールでも大きな可能性を示した。打者2人に対して43球中、安打性の当たりは3本。上々のデビューを飾った。

 鈍い音が球場内に響き渡った。同時に観客の「うぉー!」という、叫び声がこだました。原樹が西浦へ投じた19球目。内角高め129キロが、手元で鋭く曲がった。直球の軌道で打者に向かい、一気に外に逃げた。納得のカットボール。バットの芯を外し、真っ二つに折ってみせた。「少しの曲がりにこだわっている。バットを折ることが目的ではないですけど、ああやって芯を外してゴロに片付けることは理想です」と手応えを口にした。

 多投してこなかった変化球だった。「プロに入ってから、少し投げようかなと思って投げ始めた」。大学時代に習得したが、実戦ではあまり試すことはなかった。それでも、バッテリーを組んだ中村は「あのカットボールは逆球だった。それでも、折ったということは球に力がある証拠。(キャンプ)初日のブルペンの時よりも数段良かった」と評価した。

 最大の持ち味は、「ライジングシュート」。ツーシームのように沈むシュートが球界の流行ではあるが、原樹は浮かび上がるシュートを武器とする。そこに合わさった「ジュリ・カット」。打者に球種を宣言してから投げる打撃投手ではあったが、2人に対して安打性の当たりを3本しか許さなかった。「指先にかかる感触が良かった」と納得顔。真中監督も「実戦向き。先発ローテを争ってほしい」と期待を込めた。

 登板後は、すぐさまブルペンで40球投げ込んだ。シュートやカットボールだけでなく、挑戦中のチェンジアップも試すなどレベルアップに余念はない。16日に再度打撃投手で登板し、21日の阪神とのオープン戦(浦添)で実戦デビューする。左右の幅を最大限に生かした投法で、先発ローテーションの椅子を奪い取る。【栗田尚樹】

<原樹理(はら・じゅり)アラカルト>

 ◆生まれと球歴 1993年(平5)7月19日、兵庫・加古川市生まれ。東洋大姫路高から東洋大。15年ドラフト1位。

 ◆サイズ 180センチ、75キロ。

 ◆父 82歳の父敏行さんは、声楽家。大学などで講師も務めていた。

 ◆兄弟 長男は玲奈(れいな)さん、次男は理恵(ちさと)さん。

 ◆好きな歌手 AAA(トリプルエー)。「何かリズムとかが好きなんですよね」。

 ◆ニックネーム 「ジュリ」。

 ◆好きな色 「紺色です。落ち着いた色が好きです。グラブも紺色ですし、私服も派手な色は少ないですね」。