日本ハム大谷の剛速球に負けないぐらい、豪快なフルスイングだった。巨人大田泰示外野手(25)が同点の9回2死一、三塁で、鍵谷の直球を左翼席上段に持っていった。2月24日に中日との練習試合でも1発を放っているが、オープン戦では3年ぶり。勝ち越し3ランに「来た球を自分のスイングで振ることだけ考えていた。芯に当たってくれた。勝ちにつながって良かった」と胸を張った。

 未完の大器と言われ続けてきた。身長188センチの恵まれた体格。毎年、大砲候補と期待されながら、キャンプを終えるとレギュラー争いから徐々に脱落してきた。出場機会を増やすために打率を上げようと、昨季は長打へのこだわりを捨てて単打狙いの打撃スタイルに変えた。だが、一向に成績は上がらなかった。

 原点に戻った。「安打にこだわって小さくなっていた。自分の弱さが出ました。長打を打てないと。オレが入った意味がない」。当たれば1発という力強いスイングが持ち味だと再認識した。長打力を磨くため、グリップを下げて構えて力を抜き、打つ瞬間に最大限の力を伝える打撃フォームに変更した。立岡やドラフト2位重信慎之介外野手(22=早大)らライバルが結果を出す中でも「まだまだこれから。自分のスイングを貫きますよ」とぶれなかった。土壇場で、1ボールからの2球目を強振できたのは、成長の証しだった。

 それまでは大谷に完敗ムード一色だった。まだ投手の仕上がりの方が早いとはいえ、5回で8奪三振と完璧に抑え込まれた。前日4安打の岡本は「速かったです」とお手上げ。高橋監督も「なかなか攻略は難しい投手」と脱帽した。大谷にはやられたが、今年の巨人はそのままでは終わらない。大田の1発で、やり返した。【浜本卓也】