広島ドラフト2位横山弘樹投手(24)がカットボールで中日エルナンデスを差し込み、詰まらせた。7点リードの5回だ。2死球と安打で無死満塁。大量リードとはいえ予断を許さない状況だった。「冷静に投げることができた」。恐れずにカットボールを2球続けた。二併殺。1点を失うも、立て直した。

 「いい緊張感で入れた。恐れずに直球を投げることがテーマだった。それが出来ました」。7回2/3を投げ7安打3失点。初回からの省エネ投法で完投も視野に入っていたが、最後はスタミナが切れるように安打を浴びて降板。反省も残ったが、堂々とプロ初勝利をつかんだ。

 自己分析では「すぐに人を好きになるんです」と言うように、穏やかで人懐こい。野球をしていなければ保育士になっていたという。9歳で始めた野球でも、エリート街道を歩んだわけではない。好きな本は「野村ノート」。優しさを隠す、考える投球が力だ。宮崎・高千穂町から応援に駆けつけた父良人さん(51)母由美子さん(51)を前に、29日もマウンドで考え冷静に投げ続けた。

 チームは昨季の7月10日から白星なく、ナゴヤドームで8連敗中だった。だが「新人だからこそ関係ない。目の前の1勝と思っていた」と腕を振った。2回には好機でバントを成功させ打点をもぎ取った。緒方監督も「リズムもよかった。十分。恐れることなく投げてくれた」と絶賛。心優しき即戦力がプロの第1歩を踏み出した。【池本泰尚】

 ▼横山がプロ初登板を白星で飾った。広島の新人で初登板初勝利は15年7月1日薮田以来11人目。横山はスクイズと押し出し四球で2打点。初登板で「勝利+打点」を記録した広島の新人は51年4月7日杉浦、97年4月25日黒田に次いで3人目だ。広島は27日にオスカルが初勝利を挙げており、開幕から5試合目以内に2人の新人が勝利投手は08年ソフトバンク(久米と大場)以来で、セ・リーグでは60年巨人(堀本と青木)以来、56年ぶり。広島では初めてとなった。