元プロ野球選手の清原和博被告(48=覚せい剤取締法違反罪で起訴)に覚醒剤を譲り渡したとして、同法違反(譲渡)の罪に問われた群馬県みどり市の無職小林和之被告(45)の初公判が27日、東京地裁(室橋雅仁裁判長)で開かれた。小林被告は起訴事実を認め、密売人から買った覚醒剤を利益は乗せずに清原被告に売ったと明かした。その理由を「(清原被告の)信者ですので」と供述していたことも判明。14年8月ごろから取引があり、「大丈夫?」「じゃあ1つ」だけで話が通じたという。

 「今、大丈夫ですか」「ありますか」「じゃあ1つお願いします」。今年1月31日。清原被告から小林被告に電話があり、こんなやりとりが交わされた。検察側が、小林被告の犯行状況の証拠として、法廷で朗読した清原被告の供述調書。暗号のような会話について、清原被告は「覚醒剤1パケ(小袋)と注射器2~3本を4万円での意味。これだけで話は通じた」と供述したという。

 会話があった2日後の2月2日、清原被告は警視庁に逮捕された。

 清原被告に覚醒剤を売った罪に問われた小林被告の初公判。小林被告は白髪交じりの髪に、紺色のダブルスーツに白いワイシャツ姿で出廷した。目を伏せ、被告席にどっかりと腰掛けたが、時々、傍聴席を上目遣いでうかがうなど、緊張した様子も見せた。

 起訴状によると、小林被告は今年1月31日ごろ、群馬県太田市のコンビニエンスストア駐車場に止めた車の中で、清原被告に覚醒剤約0・6グラムを4万円で、昨年9月1日ごろにも、太田市内のホテルで、覚醒剤約1・2グラムを8万円で売ったとされる。小林被告は「間違いありません」と起訴事実を認めた。

 検察側は冒頭陳述で、小林被告が03年5月に覚せい剤取締法違反の罪に問われ、有罪判決を受けた前科を指摘。その上で、小林被告は14年8月ごろから清原被告からの注文を受け、覚醒剤を売っていたとした。

 検察側は小林被告の供述調書も朗読。1月31日の取引では、小林被告が密売人から「1グラム4万円」として買った覚醒剤に、持っていた少量の覚醒剤も「おまけとして」加え、利益を乗せず、そのまま4万円で清原被告に売ったとしている。検察側は小林被告が利益を乗せなかった理由について「清原さんの信者ですので、最初から清原さん相手にもうけようという気持ちは全くなかった」とした調書も読み上げた。

 覚醒剤の入手先については語らなかった。弁護人から問われた小林被告は、報復を念頭に「地元が田舎なんで、言うとちょっと怖い」との証言にとどめた。

 公判では、昨年9月に清原被告が滞在した群馬県内のホテルのシーツやたばこの吸い殻から覚醒剤の成分が検出されたとする証拠も採用された。検察側は「手や体に付着したのが落ちたのだと思う」との清原被告の供述も読み上げた。【清水優、村上幸将】

 ◆事件経緯 警視庁が今年2月2日、覚せい剤取締法違反容疑で東京都港区の清原被告の自宅を捜索。覚醒剤を発見し、同法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕した。清原被告については、所持、使用に加え、譲り受けについても起訴された。清原被告に覚醒剤を売った小林被告は2月15日、同法違反(営利目的譲渡)の疑いで、沖縄県内で逮捕され、同法違反(譲渡)の罪で起訴された。