同点劇の幕を開けたのは阪神ゴメスの8号弾だった。2点差を追う9回先頭、巨人の守護神沢村の144キロストレートを左中間席へたたき込んだ。中日ビシエドらに並ぶリーグトップの8号ソロ。まだいける-。味方打線を勇気づけ、若虎たちの奮闘を呼び起こした。

 それでも試合後、ゴメスの表情はこわばっていた。「ホームラン? ホワット(それがどうした)?」。サヨナラを目指した延長11回、先頭の打席でハーフスイングを取られ、空振り三振。眉間にしわを寄せて「また明日だ」と言い残し、1度も立ち止まることなくロッカー室へ。勝てなかったことが心残りになった。

 今季、チームの優勝とともに、ひそかに狙うものがある。来日3年目のシーズンで初の本塁打王のタイトル。来日1年目は打点王を獲得したが「今年は本塁打王を狙えると思うんだ」と野望を明かす。

 5回の反撃も、ゴメスの安打が口火だった。巨人菅野のスライダーを左前に落とし、大和の安打で1死一、二塁。岡崎のゴロを処理した二塁片岡からのトスを遊撃坂本が一塁に悪送球する間に、巨体を揺らして二塁からホームにかえった。一振りで流れを変える男。やはりゴメスが頼りになる。【堀まどか】