観覧車が1周する間に、サヨナラ勝ちしちゃった。楽天は、コボスタ宮城に新設した日本球界初の観覧車が営業開始したメモリアルデーに、1点を追う9回2死二塁から、嶋基宏捕手(31)の同点適時二塁打、岡島豪郎外野手(26)のサヨナラ打で2-1でロッテを下し、劇的な逆転勝利を飾った。敗れていれば最下位転落だった危機を土壇場で回避。ゴールデンウイークに集まった、2万6489人の大観衆を沸かせた。

 幸運なファンにとっては、夢のような空中散歩だったに違いない。試合中に回り続けた日本球界初の観覧車は、1周約6分。梨田監督は「あんなことあるんだね。5分もかかっていない」と、興奮気味に最終回のドラマを振り返った。「観覧車1周」の時間内に成し遂げた劇的サヨナラ勝利は、きっと、ずっとゴンドラの中で見つめた人がいた。

 0-1で迎えた9回。2死二塁の土壇場から、嶋が口火を切る。バットを短く持ち、カウント1-1から、ロッテ西野の146キロ直球に食らい付いた。前進守備の右翼手の頭上を越え、二塁に到達するとガッツポーズを繰り返す。「本当に気持ちだけでした」。

 1番岡島が続く。「嶋さんが気持ちを見せてくれて、僕が何とかしないと男じゃないと思いました」。1ボールからフォークを右越えに運んだ。椎間関節炎で、14日に2軍降格し、26日に復帰したばかり。打率をリーグ1位の3割4分9厘に上げる一打で勝利を決めると、仲間の手荒い祝福が待っていた。

 敗れれば最下位転落だった一戦。岡島は「全然知らなかった。試合前に負けることを考えたら、試合にならない」と集中。それよりも「観覧車ができて、練習中からみんなですごいなと見ていました。子どもたちも今まで以上に来てくれると思うし、勝つゲームを届けられたらと思います」と力にした。記念すべきオープン初日は最大待ち時間約50分。午後6時3分の営業終了まで、2666人のファンが、地上36メートルから見る仙台の空を楽しんだ。

 そんなメモリアルデーのサヨナラ勝利の陰には、4つの犠打を正確に決める小技も光った。9回無死一塁からは、松井稼への代打伊志嶺が、1球でバントを決めた。勝負手に応えた脇役の存在も支えた好循環。観覧車にかけて、梨田監督は「打線も回ったね」と、得意のダジャレで締めくくった。【前田祐輔】