覚せい剤取締法違反の罪に問われた清原和博被告の初公判は、検察側の冒頭陳述の後、被告人質問が行われた。検察が「遅くとも現役を引退した平成20年(08年)ごろから」と現役時代からの覚せい剤使用をほのめかしたのに対し、同被告は弁護人質問で、現役時代の使用を否定した。逮捕後は薬物についての書物に触れ「怖い薬物だと知った。寿命が来るまで闘い続けたい」と語り、2人の息子の名前を出し「本当に申し訳ない」と声を震わせた。

【弁護側】

 -ファンはどう思っていると思うか

 「大変失望していると。本当に申し訳ない気持ちです」

 -被告として裁かれる立場にあることは

 「プロ野球を目指す少年たち、目標とする子どもたちに、申し訳ないと思う」

 -家族に対してどう思うか

 「(2人の息子の名前)。息子には本当に申し訳ないと思う」

 -いつから覚醒剤を使用したのか

 「引退後、間もなく」

 -現役時代は

 「使っていない」

 -引退後になぜ

 「野球をずっとやっていて、ストレスやプレッシャー、不安がすべて野球で解決できていた。引退後、社会で、日頃のそういうものの解決方法がなくなり、膝の故障で足も動かなくなり、薬物に負けてしまった」

 -引退後はコーチや監督になりたかったか

 「野球選手になったら、1つの夢だと思う」

 -監督、コーチの依頼はあったか

 「いいえ」

 -引退後に趣味などはあったか

 「趣味を持とうとは思ったが、故障していたひざのこともあり、日常生活もままならず、趣味はもてなかった」

 -覚醒剤に逃げた

 「はい」

 -平成26年3月に薬物使用の記事が出たが

 「(仕事が)ほぼなくなった」

 -同じ年に離婚している

 「(覚醒剤使用が)離婚理由の1つです」

 -覚醒剤は毎日使用していたか

 「いいえ」

 -注射器はいつから

 「昨年初めて使いました」

 -1月31日に購入した。なぜ使おうと思ったのか

 「その日は週末で息子の少年野球を楽しみにしていたが、体調を崩し休んでいた。1月31日は2月1日のキャンプに向けて新しいユニホームを準備し、道具を準備する時期。野球選手にとって正月のような日ですが、自分の置かれたこの状況、心の弱さ、そういうもので」

 -31日に使ったか

 「していません」

 -なぜ

 「罪悪感と、そういう日なので、闘っていた」

 -使うとどうなる。

 「不安やストレスを忘れられる」

 -やめようと思ったことは

 「使うたび後悔した」

 -やめられなかったのはなぜか

 「自分の弱さです」

 -使用後の気分は

 「罪悪感でいっぱいでした」

 -昨年9月に買った1・2グラムは全部使ったのか

 「いいえ。捨てました。罪悪感から途中で捨ててしまう」

 -今後やめられるか

 「逮捕後、いろんな本を読み、自分なりに勉強をして、怖い薬物だと知った。寿命が来るまで闘い続けたい」

 -取り調べ中、使いたくなったことは

 「ありません。刑事さんに見せられた時、気分が悪くなり、取り調べを中止してもらいました」

 -今後の生活は

 「逮捕されてから今日まで、1度も外を歩いたことがない。まず心と体を健康にしたい」

 -やめる方法についてどう考えているか

 「国の更生プログラムなど、薬物を断つためには何でもやりたい。きちんとプログラムを受けて薬と立ち向かう」

 -入院は考えているか

 「専門家の診断があれば前向きに考えたい」

 -佐々木さんの尋問を聞いてどう思ったか

 「申し訳ない気持ちだ。逮捕後に弁護士を通じてメッセージをくれ、保釈後にすぐに電話をした。心から感謝します」

 -佐々木さんから野球に戻るよう支援する、という話があったが。

 「大変ありがたい。しかし、罪を犯した自分が野球に向き合うのは野球に対して失礼だと思うので、まずは心と体を健康にしたい」

 -留置場でお父さんに手紙を書いたか。その内容は

 「はい。初めて青のグラブを買ってもらった話を書いた。親不孝をお許しくださいと」

 -息子さんには会いたいか

 「会いたい。会って、謝りたい」

 -最後に言うことは。

 「たくさんの人を巻き込み、本当に申し訳ありませんでした」

【検察側】

 -最初に使った時、なぜ覚醒剤だったのか

 「はっきり覚えていない。引退後、酒に溺れている時期もあった。自分でもよく分からない」

 -覚醒剤は簡単に手に入らない。周囲に使っていた人がいたのか

 「はい」

 -どのくらいの頻度で使っていたか

 「それは、よく分からない」

 -昨年から使っていた注射器の前は

 「ガラスパイプであぶっていた」

 -覚醒剤に費やした金額は

 「月にいくらというのは分からない。コンスタントではない」

 -多い月は

 「ちょっと覚えていない」

 -これまでもやめようと思ったと言うが

 「恥ずかしい話ですが、何度もやめるために自ら命を絶つことばかりを考えていた」

 -薬物疑惑報道についてはどう思ったか

 「報道は大変苦しかったが、それで仕事がなくなったのがつらかった」

 -それでも使用を続けていた

 「報道後の自分の生活がすさんでいて」

 -使用が警察に知られて逮捕されるとは考えなかったのか

 「考えたことはありました。なかなか寝られなくなった」

 -やめる自信は

 「ここで証言している自分がいる。前の自分とこれからの自分は決定的に違う」

 -ストレス、プレッシャー、心の隙間を埋めるためにはどうするのか

 「16歳でいきなり電器屋の息子が全国区になり走り続けてきた。社会に適応できなかった。心と体を健康にして、手を差し伸べてくれる方々のアドバイスを聞きながらやっていきたい」

【裁判官】

 -お父さんや佐々木さんに心の悩みを打ち明けられなかったのか

 「人に相談できずに野球人生を歩んできたので、悩みを人に言うのが難しかった」

 -奥さんにも相談できなかったのか

 「心配させたくない思いもあり、自分でため込んでしまった」

 -覚醒剤を使っている時の感覚は

 「不安、ストレス、プレッシャーが一時的に頭から消えた」

 -錯乱や精神障害を起こす危険なものと知っていたか

 「そこまでの深い認識はなかった。刑事さんにさまざまなことを聞いて、危険なものだと本当に恐ろしいと思った」

 -今後もしばらくは子どもに会えない。覚醒剤を使いたくならないか

 「自分は留置場の中にいたので分からなかったが、自分の犯した罪が報道されている事実を、息子たちに見せることはもう2度としたくない」