虎が総力戦で広島に敗れた。延長12回の末の敗戦。1点リードの9回に守護神マルコス・マテオ投手(32)が救援失敗し、総力戦にもつれ込んだ。藤川球児投手(35)が3試合連続登板するなど救援陣もフル回転。ベンチ入りの投手陣全員を含め8投手の継投は実らず、勝率5割に逆戻りした。

 もはや策は尽きた…。両軍ともに決定打が出ないまま延長12回に入った。田面が先頭鈴木に四球を与えるとベンチが動く。榎田を投入し、ブルペン待機の7投手全員を使い切った。2死三塁。磯村にチェンジアップをすくわれ、打球は無情にも左前にはずむ。さらに菊池に右中間を破られて2点を失う。勝ち越しの3点を奪われ、救援陣の総動員は徒労に終わった。

 一塁側ベンチの最後列に座り、マテオも目はうつろだった。頼みの守護神が9回を1-0のスコアでしのげなかったのが敗因だ。金本監督も「ノーヒットで1点…。四球だね、やっぱり」と嘆くしかない。先頭の丸に四球を与え、新井にも制球は定まらない。2球目は胸元をかすめて、すっぽ抜ける暴投。二塁への進塁を許すと新井は二ゴロの進塁打で1死三塁になる。あっさりエルドレッドに同点の中犠飛を打たれてしまった。

 “病み上がり”の身には重荷だったのか。敗戦の責任を背負うマテオは「体は問題ない。先頭を四球で歩かせたのがすべて…」と険しい表情だった。13日のDeNA戦(横浜)で今季10セーブ目を挙げたが、15日の同カードで来日初被弾など2失点の炎上で救援に失敗。下半身の違和感を訴えて、登板を回避していた。満を持して、この日からスタンバイ。5日ぶりにマウンドに立ったが、まだ本調子とは程遠かった。香田投手コーチも「球自体は良かった。先頭への四球を反省してもらわないと」と渋い表情で振り返った。

 救援陣が安定しない。マテオの休養中はベテラン藤川が代役ストッパーを務めた。前日19日には剛腕セットアッパーのドリスが登板過多で登録抹消された。若手の石崎や田面を投入してしのぎ、勝ちパターンを確立できないのが現状だ。この日3連投で好投した藤川とマテオの配置転換について、指揮官は「さすがに最後、球児は、まだあれでしょう。(救援)3試合やで、まだ」と話すにとどめ、開幕から抑えに指名したマテオの復調を待つ構えだ。5時間5分を戦って勝率5割に逆戻り。シーズンの長丁場を乗り切るためにもリリーフ陣の整備が急務だ。【酒井俊作】

 ▼阪神の出場選手23人は今季最多。出場しなかったのは野手の陽川だけという、総力戦だった。チームでは15年6月23日広島戦(長野=6△6)での24人以来で、このときの相手先発も黒田だった。試合時間5時間5分は、3月31日ヤクルト-阪神戦(神宮)5時間12分(6△6)に次ぎ、今季両リーグ2番目の長さ。

 ▼阪神の12安打は5月4日中日戦(ナゴヤドーム)17安打以来の2桁安打。連続試合1桁安打は11で止まった。もっとも、9回までは9安打。延長回の3安打で2桁に乗せた。