巨人が今季ワーストの5連敗で貯金をすべて放出し、3位に落ちた。一打同点の9回2死一、二塁。完敗続きだった今カードで首位広島の肩に手を掛けた場面だったが、村田の三ゴロで地へ振り払われた。高橋監督は「粘って、もう1点という試合はできた」と執着を評価し、苦渋の思いは心のカーテンにつつんだ。

 ジョーカーは惜しげもなく切った。1点を追う7回無死一塁。長野に代えて鈴木を送る。指揮官は「相手にプレッシャーを与えるのもそう。(外野の)間を抜ければ、かえってこられるランナー。何とか同点にと思った」と説明した。

 数々の難局を足で切り開いてきた無双の走者。通算盗塁成功率82%と二盗も選択肢に入る。だがより高確率のセーフの確信がなければ走れない場面。広島ヘーゲンズはクイックに難はない。鈴木は呼吸を合わせながら初球を見送る。「カウント0-1は投手に有利。むやみやたらに勝負するところではない」。次の展望をにらんだが、村田が2球目のカットボールを転がし、遊ゴロ併殺打に終わった。スペシャリストは「確率として併殺になったのは仕方ない」と振り返った。勝負手に踏み切り、結果が伴わなかった。おのおのの決断に非はないが、結果として試合の分岐点になった。

 もっとも苦闘の前提として貧打がある。初回に重信、坂本の連打と好リズムで1点。初回得点は8試合ぶりだった。だがその後は6回のクルーズの犠飛による2点目が限界。5月は1試合平均得点2・42と3、4月の3・75から大きく減少した。「1、2番が出て中軸でかえすのは、どこのチームでも同じ。それを求めて打線を組んでいる」(高橋監督)。2番重信がはまりつつあるが、劇的変化には至っていない。

 今日27日からエース菅野を立て4位阪神とのAクラス死守戦が始まる。「東京に帰り、流れを変えられれば」。負のうねりにのみ込まれるわけにはいかない。【広重竜太郎】

 ▼巨人の今季同一カード3連戦3連敗は4月29日~5月1日ヤクルト戦、同6~8日中日戦に次いで3度目。3度は楽天と並び12球団で最も多い。これで5月は4試合を残して7勝12敗となり負け越しが確定。巨人の5月負け越しは06年(10勝14敗)以来10年ぶり。2リーグ制後、5月に負け越した年は過去11度あるが、優勝したのは73年だけと気になる失速だ。