プロ初登板初先発の中日ドラフト1位小笠原慎之介投手(18)が5回1安打1失点に抑えたが、救援陣が8回に逆転され、初白星はスルリと消えた。5回に無死満塁のピンチを迎えるもソフトバンクに得点を許さない。7四球と制球に苦しみながらも、2年連続日本一の打線相手に堂々たる投球だった。

 自らの手で勝ち投手の権利を得たはずだった。小笠原は2-1の5回、3者連続四球で無死満塁の最大の危機も今宮を三ゴロ併殺打。さらに四球を出し2死満塁とするが、4番内川を内角直球で中飛に封じ込めた。マウンドを降りベンチで戦況を見守った。初白星まで4アウト。8回2死から福谷が打ち込まれ逆転。18歳の手から初白星が消えた。「四球7個ですごい数。中継ぎが投げづらい状況だったと思う。僕も1回、中継ぎに入れてもらったので大変さも分かる。いい流れでつなぎたかった」と反省を口にした。

 初回、先頭牧原を空振り三振に仕留めると波に乗った。今宮への2球目はこの日最速147キロ。「緊張した。最初、三振で入れたからいい流れでいけた。余裕ができた」と最高のスタートだった。

 ウエスタン・リーグで6試合で0勝2敗、防御率5・47。結果を求めるあまりに力んでしまった。一時は試合を離れ、下半身強化のミニキャンプも張った。

 苦しむ中にも発見はあった。5月中旬、初夏の日差しがまぶしい中、ナゴヤ球場で通算402セーブの岩瀬を小笠原、浜田達らが囲んで青空教室が行われていた。41歳左腕が身ぶり手ぶり。ランニングメニューの足を止め、左翼付近の芝の上で直立不動で聞き入った。岩瀬からは「利き腕(左腕)で投げると力が出ないよ。右で投げるものだから」。小笠原は「右手の使い方はこれまで意識してなかった」と目からうろこだった。フォームの安定に取り組んでいたルーキーは「これも一理ある。やっていきたい」と目を輝かせた。必死に取り組み、この日につなげた。

 谷繁監督は「四球が7つで1失点。何かあるね。何年もプロにいるかのように堂々と投げてくれた。去年の日本一のチームに立ち向かってくれた」と評価。小笠原は次の登板へ「四球を減らしてゼロで抑えられるようにしたい。もっと僕もレベルアップしないといけない」。堂々たるプロ第1歩だった。【宮崎えり子】