全セの猛者たちが、技と力で全パをしのいだ。DeNA筒香嘉智外野手(24)が「マツダオールスターゲーム2016」の第1戦(ヤフオクドーム)で球宴1号ソロを放った。楽天則本の外角変化球に体勢を崩されながらも巧みなバットコントロールで右翼席に着弾させた。試合前のホームランダービーで不発に終わった主砲が“本番”で技術を見せつけた。7回には自身3戦連続となる二塁打も放ち、MVPを獲得した。

 セ界屈指のパワーヒッターが技ありの放物線を描いた。筒香の重心がマウンド方向に引き出された。外角への126キロスライダーにタイミングを外されても、「少し間がずれたけど、何とか入ってくれて良かった」。左足と腰、バットのヘッドは本塁方向に残し、強振することなくボールをバットに乗せた。「理想の打撃フォームというよりは、どう対応できるかという部分がある意味で理想だと思う」。技術が支える対応力で球宴1号を完成させた。

 汚名返上弾だった。試合前のホームランダービーは、まさかの0本塁打で初戦敗退。昨年の第1戦で新記録の9本塁打を量産したキングが沈黙した。「ホームランダービーは恥をかいた。せっかく選んでもらったので、スタンドに1球でも多くホームランボールを届けたかった」と苦笑いを浮かべるしかなかった。その数時間後に、同ダービーで優勝した大谷から主役を奪還してみせた。

 技だけではなく力勝負にも屈しなかった。7回、日本ハム・マーティンの150キロ直球を簡単にはじき返し、左翼フェンス直撃の二塁打。変化球を引っ張った本塁打とは対照的に、直球は逆方向に鋭い打球を飛ばした。3戦連続二塁打。3打数2安打1打点と全セ打線をけん引し「結果もそうですが、まずは楽しんでプレーすることが一番。本当に楽しめたし、ファンの方にも楽しんでもらえたと思います」と満足そうに汗を拭った。

 1点差で逃げ切り、自身初のMVPを獲得。賞金300万円を手中に収めた。今日16日は地元・横浜スタジアムで第2戦に臨む。「横浜でのオールスターでプレーできることは特別なこと。横浜のファンの前で明日も(MVPを)取れるように頑張ります」。横浜が生んだ主砲が、満を持して本拠地に凱旋(がいせん)する。【為田聡史】