日本ハム大谷翔平投手(22)が、球宴1号ソロなど3安打2打点でMVPに輝いた。「5番・DH」で先発した「マツダオールスター2016」第2戦(横浜)。5回にDeNA井納から左中間席に技ありの1発を放つと、7回にはヤクルト秋吉から左前打、8回にも中日田島から右前打の「猛打賞」。第1戦優勝のホームランダービーは西武メヒアとの決勝で0-1と敗れたが、あらためて非凡な打撃センスをみせつけた。試合は5-5で引き分けた。

 スターの称号が、また1つ増えた。大谷がヒーローの座をバットでかっさらった。3点を追う5回先頭。DeNA井納の初球、外角145キロを左中間スタンドへ打ち込んだ。「投手が代わったばかりだったので1球目、真っすぐだけを狙っていました」。球宴通算10打席目で初本塁打をマーク。「すごい気持ち良かったです。みんなホームラン打ててすごいな、と思っていた。良かった」と自画自賛だ。

 魅力をフルスロットルで解放した。7回に左前打。1点を追う8回2死一、二塁には右前へ同点打を放ち、引き分けに持ち込んだ。悔恨の思いがあった。先発投手としてファン投票で選出され、プロ野球最速の球速163キロの更新を期待されていたが、右手中指のマメをつぶして野手出場。「ファン投票で選んでもらったので期待に応えたかった」。3安打猛打賞に2打点で初のMVPを獲得し、別の形でファンに返礼した。「打者で(賞を)取れるとは思っていなかった。アクシデントもあったので。盛り上げられて良かった」と胸をなで下ろした。

 前人未到の「二刀流」への挑戦を続けて4年目に突入した。雑音に耳を貸さず、信じた道を進んできた。独特な感性の源が、常人離れした発想だ。昨年のプレミア12で、西武牧田と「もし野球選手になっていなかったら?」という話題で盛り上がった。大谷は、少し悩んだ末に「宇宙飛行士ですかね」と答えた。「宇宙に行ってみたい」と無邪気に夢を語り、ノーベル物理学賞や大気圏の話題へと発展していった。

 宇宙への博学ぶりの一面が、求道者たる横顔を示す。関心のある事案は、とことん追求して極める。こよなく愛する野球は、さらにエスカレート。現在は自身で導き出したメニューを中心に肉体作り、コンディショニングを実践中。好物のスイーツを我慢しているが、ミニシュークリームなどをほおばって欲求を満たすこともあるという。「これぐらいは、いいんです」。22歳の青年らしく時に誘惑に負け、息抜きもしながら精進の日々を過ごしている。強くなった人間力で、第1戦の本塁打競争制覇など主役を張り続けた。

 派手に彩った祭りは、終わった。「今、2位なのでもっともっとパ・リーグを盛り上げたい」。18日から再開する後半戦へ、再び真剣勝負の場へ戻る。【高山通史】

 ▼DHで出場した大谷が本塁打を含む3安打でMVP。野手で先発は13年<2>戦以来2度目で、本塁打と猛打賞はともに初めて。大谷は14年<2>戦で勝利投手となっており、球宴では勝利、本塁打、猛打賞をマーク。球宴で勝利と本塁打の両方を記録したのは通算5勝を挙げ、阪神時代の71年<1>戦で本塁打を放った江夏に次いで史上2人目(他に投手で本塁打は60年<3>戦巽が記録)。江夏は通算3安打で、当然、猛打賞はなし。勝利、本塁打、猛打賞のすべてを記録したのは大谷が初めてだ。

 ▼大谷の22歳0カ月でMVPは8位の年少記録。20歳0カ月でマークした14年<2>戦勝利は4位の年少記録で、22歳0カ月で1発は14年<2>戦山田(ヤクルト)に並ぶ10位タイ。白星に続き、本塁打、MVPでも年少記録10傑入り。

 ◆江夏の球宴1発 球宴記録の9連続奪三振をマークした71年<1>戦(西宮)で放った。1回裏に3三振を奪うと、2回の攻撃で米田(阪急)から右越えに3点本塁打。2、3回裏にも3個ずつ三振を奪った。