虎のゴールデンルーキーも夏祭りに豪快に参戦だ。阪神高山俊外野手(23)が5回、今季3号アーチを右翼席に運んだ。高山にとってはプロ入り後、聖地初アーチ。6回にも右前打を放つなどマルチ安打で好調をキープ。チームの復調を支えている。

 一瞬の静寂。そのわずか数秒後、右翼スタンドの虎党から大歓声の波が押し寄せた。5回。高山は中日吉見の2球目、ど真ん中のスライダーを強振した。低弾道の打球は、ちぎれんばかりに旗をなびかせる浜風をものともしない。逆風を切り裂きスタンドに着弾。甲子園では初となる待望のアーチをかけた。

 「打った瞬間は行ったと思ったんですけど、風でどうかなと。(甲子園での初本塁打は)うれしかったですね。3本目ですけど、一番うれしかったです」

 久々の感触だ。4月24日広島戦(マツダスタジアム)以来、約3カ月ぶりの3号ソロ。6月は月間打率2割1分7厘と不振だったが、金本監督らと付きっきりで早出特打を行うなどし、現状を打破しようとしていた。その成果か、7月は月間打率3割7分9厘、これで4試合連続安打と急上昇中だ。「監督や打撃コーチに、軸で回って少し前で打つということを言われていたので。それが、あの1打席だけですけどできたのが良かったです」。指揮官も「ちょうど取り組んでいることが実戦でできたので、自信になったんじゃないかな」。本塁打という最高の答えに思わず笑顔だ。

 甲子園での初アーチ。高山にとって、やっとの思いが結実した瞬間だった。昨年12月6日。施設見学のため、ドラフト指名後初めて甲子園を訪れた。バックスクリーン上での見学中、高山は突如足を止めた。感慨にふけるように目を細めると、目の前に広がるグラウンドを見つめながらつぶやいた。「こう見たらやっぱり広いですね。またここで打てたら気持ちいいでしょうね…」。思い起こすのは11年、日大三で甲子園に出場した高3の夏だ。決勝の光星学院戦でバックスクリーンに3ランをたたき込み、チームを日本一に導いた。今度は縦じまのユニホームでスタンドを揺るがす本塁打を-。夏の夜、ようやくその思いが実現した。

 主役級の活躍。だが、直後に福留がサイクル安打を達成した。高山はベテランの活躍を目に焼き付け、自身の奮闘を誓った。「福留さんでも全力疾走で三塁まで行ったり。もっと僕も若さを出していけたらなと思います」。もちろん、この1本だけで聖地アーチを終わらせるつもりはない。【梶本長之】

 ▼高山が甲子園でプロ初本塁打。阪神の新人では、江越が昨季3本塁打。左打ちの新人に限ると、鳥谷が04年5月27日横浜戦で打って以来、12年ぶりとなった。