巨人坂本勇人内野手(27)が、ひと振りで広島の胴上げを阻止した。0-1の8回1死一、二塁で代打で登場し、阪神藤川から21号逆転3ランを決めた。4日の中日戦で左ふくらはぎに自打球を受けた影響で3試合連続ベンチスタート。チームの窮地に登場し、プロ入り初の代打アーチを決めた。敗れれば、広島に90年の巨人が作った最速優勝記録に並ばれていたが、主将が意地の1発で防いだ。

 坂本が必死に両腕を伸ばした。8回1死一、二塁。カウント2-2から、阪神藤川の外角高めに浮いたフォークに食らいついた。上体を少し泳がされながらもバットにボールを乗せ、左翼席前列に運んだ。代打初アーチとなる逆転3ランに、三塁ベースを回ってガッツポーズ。「ちょっと合わせた感じでどうかなと思ったけど入って良かったです」とホッとひと息ついた。

 4日の中日戦で、左ふくらはぎに自打球を受けて途中交代した。その時点で、打率はリーグトップの3割4分7厘。10年にロッテ西岡(現阪神)が記録した遊撃手の歴代最高打率(3割4分6厘)も上回っていた。珍しく痛みを訴える姿を心配した周囲からは「タイトルもあるし無理しなくてもいいんじゃない」と冗談交じりに声を掛けられたが、首を横に振った。「試合に出て勝ちたいんです」。ほぼ同時期に自打球を受けたDeNA筒香が病院に行かずに復帰したと伝え聞くと「僕も、病院に行って万が一、骨折とか言われたら出られなくなる」。一流だけが備える気骨。治療を最優先しながら代打機会に備え、打撃練習ではフルスイングを徹底した。

 意地もあった。広島の優勝が決定的となり、チームも急降下。そんな苦境で、自打球というハプニングながらも先発落ちとなった責任も感じていた。「何とかチームに貢献したい」。代打出場の時点で、広島はリードしていたが「(途中経過は)知らなかった。僕らは広島どうこうより、1戦1戦勝っていくしかない」。クライマックスシリーズ(CS)に向けて必要不可欠な勢いを、代打での最速V阻止弾で生み出した。

 今日9日のヤクルト戦出場も、当日のコンディション次第になる。それでも坂本は「早くスタメンで出られるように頑張るだけです」と語気を強めた。歓喜の瞬間を、広島に簡単には味わわせない。【浜本卓也】