巨人が「剛柔」をミックスさせた攻撃で2位死守へ大きく前進した。2回1死一、三塁で小林誠司捕手(27)がチーム今季初のスクイズを成功させて先制点をつかんだ。同点に追いつかれて投手戦に持ち込まれたが、延長10回無死満塁で村田修一内野手(35)が巨人移籍後初のサヨナラ弾を放ち劇的勝利。3位DeNAとのゲーム差を2に広げ、2位確定へ「マジック2」とした。

 息苦しい試合展開を吹き飛ばすような、豪快なサヨナラ劇だった。延長10回無死満塁。5番村田に命運が託された。中日の守護神田島の外角直球に「外野フライでいい」と余分な力感が消えたスイングで捉える。だが打球には勢いが加わった。自身4本目、巨人移籍後初のサヨナラ本塁打を未体験の「サヨナラ満塁弾」の称号を添えて、巨人ファンが待つ右翼席に届けた。「外野は抜けたと思ったけどスタンドまで行ってビックリ。(祝福に来た)クルーズに鼻に水を入れられた」と目を丸くし、湿った鼻を膨らませた。

 決着はお家芸の1発だったが、先制点は意表を突いてもぎ取った。2回1死一、三塁。8番小林誠が初球からバントの構えを見せ、2球目にセーフティースクイズを敢行した。今季139戦目でチームとして初めて成功させたスクイズ作戦。高橋監督は「確率の高い、まず得点をと考えた」と8、9番への安打を期待するより、確率論で選択した。

 試合前から“予感”はあった。ギャレット、クルーズがバント練習に加わった。今季はほぼ見られなかった光景。大柄の助っ人たちが背中を丸めて、不器用にバットを寝かせて打球を転がそうとした。ギャレットは「バントは1つの戦術。打席に入って、初めてバントということにならないように、練習したよ」と明かした。

 三塁走者でスクイズの得点を踏んだ村田もチームの意思を感じていた。「1点でも取れるときに取ろうと。みんな練習している」。2位死守への戦いも続いているが、ポストシーズンへの戦いも意識している。高橋監督は「そういう場面が来たら考える」と多くは語らなかった。進撃の巨人と化すために、繊細な攻撃法も備えておく。【広重竜太郎】

 ▼村田が延長10回に満塁サヨナラ本塁打。巨人の満塁サヨナラ弾は11年10月22日長野が横浜との最終戦で記録して以来11本目、延長回では4本目になる。村田の満塁本塁打は13年7月5日DeNA戦以来5本目、サヨナラ本塁打は横浜時代の08年6月21日西武戦以来4本目だが、満塁サヨナラアーチは初めて。村田のサヨナラ安打は6月15日楽天戦の単打以来、今季2本目で通算11本目。セ・リーグで11本は古田(ヤクルト)矢野(阪神)に並ぶ9位タイ。