ソフトバンクが起死回生の逆転勝利を収めた。1点を追う9回に同点に追いつくと、柳田悠岐外野手(28)が中前に勝ち越し打を放った。右手薬指骨折のためレギュラーシーズン終盤で離脱した男が、劇的勝利を呼び込んだ。直前には福田秀平外野手(27)が二盗、三盗(重盗)を決めるなど、王手をかけられる寸前で息を吹き返した。日本ハムのアドバンテージを含め1勝2敗となった。

 土壇場の1プレーから鷹が再び羽ばたいた。1点を追う9回1死一、二塁。ソフトバンクは打者本多の2球目に重盗を仕掛けた。二塁走者の福田は間一髪で三塁を奪い、一塁走者の中村晃も二塁に達した。直後に、本多の同点適時打が飛び出した。福田は「マーティンのモーションは頭に入っている。それと(この日は)重なった。勝負だと思った」。絶対に失敗できない場面で、今まで重ねてきた研究に、自信と勇気を持ち、自らの判断で仕掛けた。

 この男が、奮い立たないわけがない。ネクストバッターズサークルで見ていた柳田だ。「(福田)秀平ならいけるなと思った。みんながチャンスつくってくれた。とにかく前に飛ばそうと。それだけです」。なおも1死二、三塁。マーティンの直球をしぶとく中前へゴロではじき返した。

 9月1日西武戦で右手薬指を骨折。ぶっつけ本番でCSへ間に合わせた。だが、ロッテとのファーストステージは2戦8打数無安打。切り替えて乗り込んだ札幌でも第1戦は4打席音なし。「もう、試合に出たくない。つらかった」とこぼすまで追い込まれていたが、5回の第3打席で三塁への内野安打。今CS15打席目での初安打で、一気に気持ちが楽になった。

 柳田と福田は同学年。周囲のほとんどが柳田を「ギータ」と呼ぶが、福田は「悠岐」と呼ぶ。公私ともに信頼しあう仲だ。札幌ドームでのCSは6連敗中だったが、選手の能力の高さで、負のデータも断ち切った。柳田は「本当にみんな最後まで諦めなかったし、それが勝利につながった。明日(14日)からも勝てれば」と巻き返しを誓った。敗色濃厚ムードから息を吹き返し、ここから奇跡を起こす。【石橋隆雄】

 ▼ソフトバンクが9回に3点を奪って逆転勝ち。プレーオフ、CSで土壇場の9回に逆転勝ちは14年ファイナルS<1>戦のソフトバンク以来だが、この時はホームでサヨナラ勝ち。ビジターチームが9回表に逆転して勝ったのは初めてだ。この回のソフトバンクは、福田2盗塁、中村晃、本多と4盗塁。1イニング4盗塁は、過去8度あった2を超えるイニング最多記録。1試合4盗塁も74年<2>戦ロッテと並ぶ最多タイとなった。日本シリーズでも1イニング最多盗塁は3で、1イニング4盗塁はポストシーズン史上初めて。

 ▼福田は二盗、三盗と連続成功。プレーオフ、CSで個人の1イニング2盗塁は初めて。日本シリーズを含めても、86年<1>戦辻(西武)以来、8度目のポストシーズン最多タイ記録。福田は同点のホームを踏んだが、殊勲の得点となったのは60年<3>戦で先制得点した鈴木武(大洋)以来56年ぶり2人目。