広島黒田博樹投手(41)が今季限りで現役を引退することが18日、分かった。メジャーの高額オファーを断り広島に復帰した「男気」黒田の野球人生を過去紙面で振り返ります。

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 やはり黒田は黒田だった。8年ぶりに広島に復帰した黒田博樹投手(40=ヤンキース)が16日、広島市内のホテルで入団会見に臨んだ。繰り返し口にしたのは、球団、ファンへの思いと、野球人生に掛ける覚悟。ユニホーム姿もグラウンドで披露するため、この日は着用せず。「1球入魂」を地でいく男が、広島を24年ぶりの歓喜に導く。なお、契約は1年で年俸4億円プラス出来高払い。背番号は「15」。

 最前線で戦ってきた黒田の生きざまだった。テレビカメラ17台、約40社150人が見守る入団会見。フラッシュを全身で受け止めながら、一言ずつ言葉を紡いだ。日米通算182勝。大きなプレッシャーに時折苦笑いを浮かべながらも、きっぱりと言った。

 「いつ壊れてもいい、いつやめてもいいと思ってマウンドに上がっている。人にできないことをやっている、というマインドは変えずにやりたい」

 ヤンキースのエースまで務めた黒田だが、意外にも最初に口にしたのは不安だった。楽しみか、と問われると「正直、不安しかないです」と言った。襲いかかる不安の盾となったのが強い気持ち。目の前の敵をなぎ倒すため、腕を振るだけだ。「1球入魂」を誓い、その決意を言葉に変えた。

 「日本復帰1戦目で肩が飛んでしまう可能性もある。それでも後悔はしない」

 復帰決断には、やはり、おとこ気があふれていた。年俸20億円近い巨額のオファーを蹴ってでも広島を選択。自分のことを待ってくれている人がいる。最初にFA権を取得した06年の最終戦を思い出しながら口を開いた。ファンのために―。それがすべてだった。

 「広島でマウンドに上がった方が、充実感と、メジャーで投げていたとき以上の違ったものが出せるんじゃないかなと。カープのユニホームを着て投げる方が、最後の1球になっても後悔は少ないと思った」

 米国では4度ブルペンに入り、状態は「年相応より少し若いくらいです」。カーブも継続して取得に取り組んでいるという。ユニホーム姿は本人たっての希望で2日後までお預け。戦闘服はグラウンドで着るものだというメッセージも込められているに違いない。今日17日に沖縄入りし、18日にチーム合流する。場所が変わっても、熱いハートは変わらない。黒田が黒田らしく、歩み続ける。

◆一問一答

 ──復帰の理由は

 黒田 06年ですかね。最初にFA権を取得したときにファンの人たちに心を動かしてもらったので。今度は自分がファンの人たちの気持ちを動かせればという気持ちでした。

 ──30球団勝利が迫っていた。悔いはないか

 黒田 記録に関してはプロでやっている以上大事かもしれないが、いろんな部分を考えると、帰るのは今年が最後なんじゃないかなと判断した。

 ──広島とは

 黒田 帰るならカープと口にしてきて、気持ちがぶれないためにもメジャーで結果を出し続けたいと。それが、自分のなかでのモチベーションになっていた。それくらいの気持ちにさせてくれるチームです。

 ──広島で野球人生を終える

 黒田 もう40歳ですし、期待されるほどの投球ができるかどうかは、現時点では、そこまで自信は全くない。もがき苦しみながらも、最後はカープのユニホームを着て投げたいというのが一番です。

 ──金銭面では差があったなかでの復帰

 黒田 米国でたくさんの経験をしたなかで、応援をしてもらうことが当たり前ではないと感じた。広島という小さい町ですけど、そこで僕のことを待ってくれている人がいるというのをすごく感じていた。

 ──エース、開幕は

 黒田 当然、マエケンの彼の実績に関して見ても、彼がやるべきだと思います。自分自身が結果残したと言ってもメジャーでの話なので。アメリカで出来たから日本で出来るというわけでもない。それは妥当なことだと思います。

※記録や表記は当時のもの